最新記事

北朝鮮

「ICBM発射映像に炎に包まれる兵士」金正恩が目撃しながら大喜びか

2017年12月7日(木)17時40分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

先月29日にICBM「火星15」型の発射実験成功を喜ぶ金正恩 KCNA-REUTERS

<先月北朝鮮がICBMの発射実験を実施した際に北朝鮮軍の兵士が炎に包まれて死亡したという情報が。金正恩はそれを見ながら実験成功を喜んでいたのか?>

北朝鮮が先月29日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星-15」型を発射した際、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士と思しき人物が、エンジンから噴出された火炎に包まれて死亡したとの情報が出ている。しかも北朝鮮が公開した映像に、その場面が映っていたという。

米政府系のラジオ・フリー・アジア( RFA)が北朝鮮国内の複数の情報筋の話として伝えたところでは、北朝鮮の軍内部ではもちろん、テレビでこれを見た人々の間で衝撃が広がっているという。

その後、映像は編集されて再放送されているとのことだが、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋はRFAに対し、「『火星15』の'発射場面が最初に流されたときには、発射台近くにあいた兵士が炎を避けようとする様子が間違いなく映っていた。また編集された映像にも、兵士の姿が一瞬だけ映っている」と話している。ただ、最初の映像を見た人でなければ、編集後の映像を見てもどこに人影が写っているかわからないという。

(参考記事: 【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮、ICBM発射で死亡事故か...米メディア報道

この情報筋はまた、「問題の場面を見た人々は、『火星15』の発射映像が当日ではなく1日後に放映されたのも、このような事故のためだったのではないかと推測している」としながら、「実際には、(ミサイルの)周囲により多くの兵士がいたかもしれない」と語る。

さらには、「事故が兵士のミスのせいなのか、発射管制室の落ち度なのかは分からないが、現場にいた金正恩が目撃しなかったはずはない。それでいて発射成功に浮かれ、笑顔を浮かべている様子に庶民は鳥肌が立つ思いをしている」と話している。

北朝鮮では、行政の怠慢による大規模な事故が後を絶たない。その凄惨な現場の情報が、口コミで広く伝えられてもいる。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

しかし、テレビニュースは事件や事故の報道をほとんど行わないから、人々は現場の様子を見ることには慣れていない。問題の映像に、本当に事故の瞬間が映っていたとしたら、それを見た人々が受けたショックはさぞや大きかったはずだ。

その分、発射成功を喜ぶ金正恩党委員長への反感も強いものがあったと思われる。いったん離れた民心を取り戻すことは、ミサイル開発よりずっと難しいことを金正恩氏は知るべきだ。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減1月に急増、17年ぶり水準 UPSやアマ

ビジネス

英中銀が金利据え置き決定、5対4の僅差 今後利下げ

ワールド

中国外相、キューバ外相と会談 国家主権と安全保障を

ビジネス

マレーシア、今年の成長予測上げも AIブームが後押
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中