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サウジ汚職摘発の真相 「王室分裂」はムハンマド皇太子の政敵排除

2017年11月18日(土)11時38分


政敵排除が目的か

ムハンマド皇太子が今回の行動を決意したのは、自身が王位継承することに対して、思っていたよりも親族の反対が多いことに気付いたことがきっかけだった、と今回の事件に詳しい関係者は語る。

「皇太子への支持を躊躇する者は警戒すべきだというサインだ」とこの関係者は語る。「汚職撲滅キャンペーンという考え自体、王族を標的にしている。それ以外は見せかけだ」

サルマン国王は今回の粛清について、「公共の利益よりも私的な利益を優先して違法に金を稼ごうとする、一部の心の弱い者による搾取」に対応するものだと述べている。内部関係者によれば、容疑は情報機関が収集した証拠に基づいているという。

政権支持者は、今回の汚職撲滅キャンペーンが実際には政敵の排除を目的としているのではないかという憶測を否定。本記事について、宮廷からのコメントは今のところ得られていない。

リッツカールトンで現在拘束されている人物の1人が、ムハンマド皇太子の従兄であり、強力な権限を持つ国家警備隊の隊長を務めるムトイブ王子だ。

ムトイブ王子はリヤドの農場にある自宅にいたが、皇太子と面会するよう呼び出された。こうした呼び出しは、夜間であっても高級官僚にとって珍しいことではなく、特に疑念を招かなかったとみられる。

「彼は会合に出かけ、戻ってこなかった」。拘束された一部の人々と繋がりのある第2の関係者はそう語る。

拘束されている人々のなかには、国際投資会社「キングダム・ホールディング」の会長であり、ムハンマド王子の従兄である富豪のワリード・ビン・タラール王子や、元リヤド知事で故アブドラ前国王の息子トルキー・ビン・アブドラ王子も含まれている。

一部の王室ウォッチャーによれば、夏に開かれていた王族会合で、対立は明らかになっていたという。ムトイブ王子を含む有力王族の一部が、ムハンマド王子の皇太子昇格を快く思っていないことは、同皇太子もよく分かっていた、と内部関係者は語った。

サウジ国内で「MbS」というイニシャルで呼ばれることの多いムハンマド王子はかつて、国内にはびこる汚職の捜査を進め、トップ官僚の摘発も躊躇しない、とインタビューなどで公言していた。

その手段となったのが、サルマン国王が創設し、4日発表された汚職対策委員会だ。国王はムハンマド皇太子を同委員会のトップに据え、過去3年間に同皇太子に与えた数々の権力をさらに強化した。

サウジ当局は、これまでの汚職捜査で208人の容疑者を取り調べ、汚職によって不正取得された金額は少なくとも1000億ドル(約11兆3000億円)と推定される、とサウジのシェイフ・サウド司法長官は9日述べた。汚職対策の委員長は、捜査官は過去3年間証拠を集めてきたと語る。

汚職との戦いによって、ムハンマド皇太子は国民に人気の高い政策遂行と、自身の王位継承に対する障害排除を組み合わせた格好だ。

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