最新記事

アメリカ外交

トランプのアジア歴訪に喜んだ国、戸惑った国

2017年11月16日(木)17時31分


取引の極意

トランプ大統領は帰国前、記者団に対し、「少なくとも3000億ドル(約34兆円)、あるいはその3倍」規模の契約を結んだと胸を張った。

米産業界はトランプ大統領の中国訪問で約2500億ドルの商談をまとめたが、その多くは法的拘束力がない。米産業界がずっと不満を訴えてきた中国市場へのアクセスや先端技術共有の緩和については、進展が見られなかった。

国内での支持率が低迷し、米大統領選における「ロシア疑惑」捜査が足かせとなっているトランプ大統領にとって、こうした契約の数々は重要な手土産となる。

「中国との何十億ドル規模の契約は、米国の貿易赤字を減らす助けにはならないかもしれない」と、日本の元外交官は匿名で語った。「だが、産業界の一行を連れて中国訪問したことで、土産を手に帰国することができたと国民に話すことは可能だ」

トランプ大統領の歴訪による重要な成果はほとんどなかったものの、中国からの高まる主張を不安視するアジア諸国は、トランプ政権が今でも同地域にコミットしている証しとして、今回の訪問を歓迎したかもしれない。

「アジア諸国が求めていたのは、米国が少なくとも名目上、アジアに引き続きコミットしていることを明確に示すため、(トランプ氏が)ただ地域を訪れることだった」との見方を、マレーシア戦略国際問題研究所のシャリマン・ロックマン上席研究員は示した。

韓国の政府高官は、同国訪問の際にトランプ氏が予想外の行動や発言を行うことを心配していたが、大統領はかなり思慮深かったと話した。「韓国は米国とのパートナー関係において安心することができた」

アジア歴訪の最初の訪問国である日本でも大統領の評判は良かった。米大統領選で勝利を決めてまもなく、安倍晋三首相がトランプタワーを訪問し、高価なゴルフクラブをプレゼントするなど、当初からトランプ氏の機嫌をうかがっていた。

「最も重要な成果は、同一の戦略を共有しているというほぼ同じメッセージを、われわれは世界に向けて発信できるということだ」と日本のある政府当局者は語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ボーイング「777X」、納入開始は2027年にずれ

ワールド

べネズエラ沿岸付近に戦闘機5機、国防相が米国を非難

ビジネス

テスラ第3四半期納車が過去最高、米の税控除終了で先

ビジネス

ホンダ、ブラジルの二輪車工場に440億円投資 需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中