最新記事

インド

トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち

2017年11月7日(火)19時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

他の地域はもっと悪い。最近あったケースでは、屋外で用を足している最中の女性をパトロール隊が発見、それを写真に収めようとしたのを止めに入った男性が連行された。あるニュース番組は視聴者に向け、外で用を足す人の恥ずかしい姿を捉えた写真と名前の提供を呼び掛けている。この写真を全国放送で流し、「恥知らず」として知らしめるために使うのだ。

(公衆トイレ内で女性が襲われることもある)


一方でパトロール隊は使命感に燃えている。ビード県でパトロールに定期的に参加するDhanraj Nilagは、人々の羞恥心を煽ることがトイレを使うことの動機付けになると考えている。ビード県のトイレ環境が他の地域に遅れを取っていることもNilagの懸念事項だ。「この任務は完遂しなければならない」と語った。

政府が「スワッチ・バーラト」に力を入れるのには経済的理由もある。生理中の女性にとってトイレの存在は特に大切だが、女子学生はトイレ不足のせいで学校を休んでしまうという。ある報告では、インドの衛生問題に起因する経済的損失は2015年に1065億ドル規模と推測された。これはインドのGDP(国内総生産)の5.2%に匹敵する額だ。

モディ政権が発足して以来、5200万以上のトイレが設置されており、「スワッチ・バーラト」は国際社会からも支持を得た。世界銀行はこの取り組みを加速させるために15億ドルの融資を行っている。

それでも、弱い立場にある人の「人間の尊厳」を攻めるようなやり方には疑問が残る。ワシントン・ポスト紙の報道によると、ユニセフ(国連児童基金)はインド政府の「辱め作戦」から距離を置く方針を示している。

近代化を急ぐモディ政権と市民の気持ちには、まだまだ擦り合わせの余地がありそうだ。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中