最新記事

医療

トランプ、オバマケア見直す大統領令に署名 医療機関や保険会社は批判

2017年10月13日(金)10時16分

10月12日、トランプ米大統領(中央)は、現行の医療保険制度改革(オバマケア)の規制を一部緩和し、米国民がより簡素な保険商品を購入することを可能にする大統領令に署名した。ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は12日、現行の医療保険制度改革(オバマケア)の規制を一部緩和し、米国民がより簡素な保険商品を購入することを可能にする大統領令に署名した。

オバマケアを巡っては、トランプ大統領が改廃を看板政策の一つに掲げてきたものの、共和党内で十分な支持を集めることができず頓挫続きとなっていた。今回の大統領令をもってオバマケアを弱める狙いがある。

オバマケアでは保険プランで出産や新生児のケア、処方薬やメンタルヘルスなど10項目をカバーすることが義務付けられてきた。今回の大統領令により、複数の中小企業は組合を結成し、より安価で要件の少ない保険プランを州を越えて購入できるようになる。

これらの組合は保険を団体で購入することにより、医療費が高額な病気にかかった組合員の割合が増えるリスクを低減でき、中小の雇い主の負担増加を防げるという。また、従業員向けの保険購入にあたり、組合としてのほうが保険会社と交渉しやすくなるとホワイトハウスは説明する。

トランプ大統領は署名式で「オバマケアにかかるコストは法外で、すべてを駄目にする」と発言。今回の大統領令は「始まりに過ぎない」としたうえで「オバマケア改廃の貫徹に向け議会に圧力をかける」と語り、政権が追加措置を取る方針を鮮明にした。

ただ、新たな保険プランは2019年まで選択できない可能性があるほか、民主党所属の州司法長官が大統領令に反対して法的措置を取る可能性もある。

民主党のシューマー上院院内総務はトランプ大統領を批判。議会でオバマケア改廃法の可決に失敗したため、大統領は単独でオバマケアの破壊工作を行っている、と語った。

アメリカン・エンタープライズ研究所の医療保険の専門家、ジョセフ・アントス氏は、今回の大統領令が大きな影響を与えるとは考えにくいと指摘。もともと保険コストが低い地域の雇い主はコストがより高い地域の企業と一緒に保険を購入したいと思わないため、全体としてコストが大幅に節約される可能性は低いという。

また、トランプ大統領が組合の医療保険プランを拡充する法的権限を有しているかどうかを疑問視する声もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏の銀行融資低迷、インフレ期待低下 利下げの

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 介入警戒の売

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中