最新記事

AI

フェイスブックの辣腕AI交渉人は、相手の心を読みウソもつく

2017年9月4日(月)11時25分
ケビン・メイニー

Tawatdchai Muelae/iStock.

<「外交官ボット」のデビューも近い? 進化を続ける人工知能がもたらす不気味な未来>

フェイスブックが開発している人工知能(AI)は、すご腕の交渉人らしい。私たちには理解できない言語を話し、ウソもつく。まさか「AIトランプ」でも製造しているのだろうか。

同社のAI研究チーム「FAIR」は先頃、人間や他のAIと交渉できるチャットボット(自動会話プログラム)を開発したと発表した。AIの可能性に興味をかき立てられるが、同時に不気味な不安も湧き上がる。人間のふりがうまくなり過ぎて、プログラムなのか人間なのか区別がつかなくなったら......。

インターネット上で人間の代わりに旅行の計画を立てて予約を取り、腕のいい水道工事業者を探し出す「AIアシスタント」は、開発者の長年の夢。小売サイトで支払いを代行するだけの受け身の作業にとどまらない、有能な「交渉人ボット」だ。

8月にオーストラリアのメルボルンで開催された「国際自動交渉エージェント競技会(ANAC)」は、今年で早くも第8回。テーマの1つは、「さまざまな状況で、見知らぬ相手と熟練した交渉ができる実用的な交渉エージェントの設計を促進する」ことだ。

「外交戦略ゲーム」部門では、20世紀初頭のヨーロッパを舞台にボットが本物さながらの外交交渉を競い合った。レックス・ティラーソン米国務長官のボットと北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長のボットが、地球の運命を交渉する日も近いのだろうか。

【参考記事】ウォール街を襲うAIリストラの嵐

現在のAIは人間との短い対話やレストランの予約などの単純作業はこなすが、微妙な駆け引きを重ねて合意に達することはできない。

これを実現するには、人間と同じように「交渉」するスキルが必要だ。すなわち、相手の性格や意図を想像して反応を予想し、行間を読んで、人間の言語を流暢に操り、時にははったりもかける。

これらの能力を習得する方法も、AIが自力で学ぶ。FAIRの研究者が作成した機械学習のソフトウエアは、人間やほかのボットと練習を積みながら交渉の手法を改良している。

注目すべき点は、練習相手を務めた人間の大半が自分がボットと話していることに気が付かなかったことだ。AIと人間のアイデンティティーの混同は既に起きているようだ。

FAIRが開発したAIは人間の交渉人と同じくらいの頻度で有利な交渉をまとめられるようになったが、その過程でウソをつくことも覚えた。「(ウソをつく)行為はプログラミングしたのではなく、目標を達成する手段の1つとしてボットが見いだした」と、FAIRの研究者はブログに書いた。いずれは道徳的な指針をプログラミングする必要があるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪CPI、1月は前月比0.4%上昇 コアインフレ加

ビジネス

1月企業向けサービス価格、前年比2.6%上昇 前月

ワールド

中国春節の9連休、国内旅行と消費支出を押し上げ

ビジネス

グーグル、データセンター向けに米電力会社2社と契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中