最新記事

アメリカ政治

白人至上主義の扱いめぐり共和党もじわり「トランプ離れ」

2017年8月24日(木)16時30分
グレアム・ランクツリー

バージニア州シャーロッツビルに集まったKKKメンバーと反対派 Jonathan Ernst-REUTERS

<人種差別の是非をめぐって燃え上がるアメリカ。どうしても白人至上主義を断罪できないトランプの止めになるか>

バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義団体と反対派の衝突に対するドナルド・トランプ米大統領の対応は、共和党支持の有権者にも受けがよくないことが最新の世論調査で分かった。

政治ニュースサイト・ポリティコと調査会社モーニング・コンサルトが23日に発表した世論調査によると、トランプの支持率は共和党支持の有権者の間でも1週間前の81%から73%に低下。有権者全体では1週間前の44%から39%に低下した。

支持率低下を招いたのは、8月12日にシャーロッツビルで起きた事件だ。警察によれば、白人至上主義に抗議する人々に極右の男が車で突っ込み、抗議側の女性ヘザー・ハイヤーが死亡したほか、19人が重軽傷を負った。事件に対し「双方に責任」と言い、極右の暴力行為を明確に断罪しなかったトランプに批判が集中した。

【参考記事】トランプが共鳴する「極右思想」 ルネ・ゲノンの伝統主義とは?

トランプは22日夜、アリゾナ州フェニックスで選挙戦スタイルの支持者集会を開き、シャーロッツビル事件に対する自分の対応を擁護した。

1週間で就任後最低に

ここ1週間ほどに実施された他の世論調査でもトランプの支持率は35~43%で、就任後8カ月間の最低水準まで落ち込んでいる。

ポリティコ/モーニング・コンサルトの調査は、有権者登録をした1987人を対象に8月17~19日に実施され、シャーロッツビル事件を巡り、トランプが出した3つの声明と記者会見での発言を有権者がどう受け止めたかを浮き彫りにした。

その3つは以下の会見と声明だ。8月12日、シャーロッツビル事件の直後の会見では、トランプはKKKなどの名前を出さず、「憎悪や偏見、暴力を非難」するにとどめた。これに批判を受けると8月14日には声明で、「人種主義は悪」とし、KKKやネオナチを名指しで批判してみせた。しかし翌15日の会見では、白人至上主義者と反対派の「双方に非」があると言い、人種差別批判から一歩後退した。

そして注目された22日、フェニックスでの支持者集会では、トランプは再び、白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)やネオナチに抗議した人たちも暴力的だと非難。白人至上主義者だけに非があるわけではなく、「双方に非」があるとした以前の声明を再度読み上げた。

【参考記事】トランプ政治集会の中で聞いた、「優しい」支持者たちの本音

この集会に先立つ21日夜、共和党のポール・ライアン下院議長はCNNの番組でシャーロッツビル事件に関するトランプのコメントの一部は「倫理的に曖昧だ」と苦言を呈した。

オルタナ右翼の名付け親リチャード・スペンサーは、フェニックスでのトランプの演説を受けて、「トランプは決してオルタナ右翼を非難しない」とツイートした。オルタナ右翼は、白人至上主義者のほか、排外主義者やネオナチなどを含む幅広い概念だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・サウジ、安全保障協定で近く合意か イスラエル関

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、

ワールド

米大学の反戦デモ、強制排除続く UCLAで200人

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中