最新記事

生物時計

男性にもある「妊娠適齢期」 精子の老化が子供のオタク化の原因に?

2017年6月29日(木)18時20分
モーゲンスタン陽子

「ギーク」は、「ナード」とともに「オタク」を表す語として用いられ、社交性に欠ける人物という印象があるが、その一方で高い知能と強いこだわりを持つ人が多い。アメリカとイギリスの研究者がイギリスの12歳の双子の膨大なサンプルから最終的に7781人のデータをもとに、非言語式知能検査の結果と、興味の対象への集中力、社会性の欠如などを基準に「ギーク指数」を割り出したところ、この指数は父親の年齢と比例して高くなった。ここでも45歳がポイントとなるようだ。

ただし、この傾向が見られたのは男の子のみ。一般にギークといわれる男の子たちはSTEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)に強いとされる。現代の社会状況を考えると、これらの資質は将来の成功につながる可能性が高い。高齢の父親による問題点が多くとりざたされるなか、これは朗報といえるだろう。

高齢の父親はたとえば学術分野などに長くたずさわっている傾向があるので、このような特徴は父親自身に培われた後天的な要素と、先天的な要素、すなわち高齢で起こる精子の突然変異による2つの理由が考えられる。

論文の著者の一人、マグダレナ・ジャネッカ博士は「私たちの第一の仮説は、高齢の男性の子供に見られる高レベルの『ギーク』の特徴は基本的に父親自身の特徴によるものだということです。父親になる年齢を遅らせることにした男性はたいていキャリアの延長や学究的な探求が原因で、彼ら自身が高レベルの『ギーク』である可能性が高いからです」と語った。

もう一つ重要な点は遺伝的な問題だ。「ギーク」の特質はともすれば自閉症にもつながるが、女の子にこの特性が見られなかった点から、父と息子のあいだの特別なつながりがわかれば、なぜ自閉症が男の子に多いかを究明する手がかりになるかもしれないという。

ジャネッカ博士はまた、この研究結果が高齢の男性に家族計画を思い留まらせるものであるべきではないと考える。男性もバイオロジカル・クロックを意識し、健康的な質と量の精子を保つ努力は必要かもしれないが、あまり年齢を気にしすぎることはないのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中