最新記事

ロシア疑惑

コミー証言、トランプ大統領の司法妨害を立証できるか?

2017年6月10日(土)10時34分

6月8日、コミーFBI前長官(中央)は米議会証言で、フリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するようトランプ大統領から指示されたと認識していると明言し、大統領が司法妨害をしたとの疑惑を補強する格好となった(2017年 ロイター/Jim Bourg)

コミー連邦邦捜査局(FBI)前長官は8日の米議会証言で、フリン前大統領補佐官に対する捜査を中止するようトランプ大統領から指示されたと認識していると明言し、大統領が司法妨害をしたとの疑惑を補強する格好となった。

司法妨害は、トランプ大統領に対する弾劾裁判の根拠となり得るが、その立証は、当事者の意図が構成要件となるため、明確さに大きく欠ける。コミー氏やFBI捜査に対するトランプ氏の対応や、大統領自身に、司法妨害が適用できるかどうかについて、法律専門家の見解は大きく割れている。

コミー前長官は上院情報委員会に対し、フリン氏に対するFBI捜査から手を引くようトランプ大統領から指示を受けたと理解していると述べた。昨年の米大統領選におけるロシア介入疑惑や、トランプ陣営との癒着の可能性を巡る捜査の一環で、フリン氏は捜査対象となっていた。

コミー前長官はまた、先月突然トランプ氏に解任された理由は、ロシア疑惑の捜査指揮に大統領が不満だったからだと認識していると答えた。

トランプ大統領の代理人、マーク・カソウィッツ弁護士は、コミー氏の議会証言後、「大統領は、形式的にも実質的にも、コミー氏に対して誰かの捜査をやめるよう指示したり、提案したことは一度もない」と述べた。

司法妨害の要件と、コミー証言が訴追や弾劾に結びつくかどうかを検証した。

●司法妨害とは何か

裁判所が扱う事件や、刑事捜査、政府の行政手続きに対する妨害行為を犯罪とする条項は、連邦法と州法に複数存在する。

誰かを司法妨害容疑で訴追するには、検察官は、その人物に捜査や行政手続きを妨害する意図があったことを立証する必要がある。その人物が妨害に成功したかどうかは関係がない。

では、大統領が司法妨害で訴追を受けることは可能なのか。

米国憲法は、大統領を犯罪行為で訴追ができるかどうか、直接言及していない。多くの法律専門家は、これにより大統領は刑事訴追を免れると解釈している。だがこれは、「未決着の法律論争」だと、サバンナ法科大学院のアンドリュー・ライト教授は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUのグリーンウォッシュ調査、エールフランスやKL

ワールド

中南米の24年成長率予想は1.4%、外需低迷で緩や

ビジネス

ユニバーサル、TikTokへの楽曲提供再開へ 新契

ビジネス

海外旅行需要、円安の影響大きく JAL副社長「回復
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中