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ミャンマー

スーチーが「民族浄化」を批判できない理由

2017年5月18日(木)10時00分
エドワード・パーカー

半世紀にわたって人々を苦しめてきた軍政は文民政権に部分的にせよ権限を移譲したが、それには厳しい条件が付いた。軍のやることには目をつぶり、沈黙を守ること。スーチーが強く軍を非難すれば、現政権ばかりか、生まれたばかりのミャンマーの民主主義も即座につぶされるだろう。

軍はスーチーを必要としている。半世紀に及ぶ鎖国状態から脱して経済的に門戸を開放し、外資を呼び込むには、彼女と手を組むしかない。

スーチーとNLDは軍に協力する代わりに限定的な行政権限を握り、教育、エネルギー、インフラなど山積する問題を少しずつ解決しようとしている。その過程でじわじわと軍の権限を切り崩し、完全な民政移管を実現しようとしているのだ。

【参考記事】悪名高き軍がミャンマーで復活

こうした現実は美しくないし、感動的でもない。だが真の自由は一夜にして勝ち取れるものではない。何年にも及ぶ闘いや揺り戻し、妥協や取引を経てようやく実現する。理想的ではなく、分かりやすくもないが、それが現実の政治というものだ。

スーチーとNLDが政権を獲得してからまだ1年余り。軍政の負の遺産を一掃するには、これから何年もかかるだろう。

From thediplomat.com

[2017年5月23日号掲載]

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