最新記事

仏大統領選

フランス大統領選決選投票、ルペンは「手ごわく危険な対抗馬」

2017年4月24日(月)18時43分
エミリー・タムキン

5月7日に予定される決選投票で、2大政党の支持層を囲い込む力があり、勝利を収めそうなのはマクロンの方だ。だがルペンに勝ち目はないと判断することを、疑問視する専門家もいる。

ルペンはマクロンにとって「非常に手ごわくて危険な対抗馬だ」とコロンビア大学のアイリーン・フィネル・ホニマン准教授(ヨーロッパ経済史)は指摘する。「追いつめられたルペンは、なりふり構わず立ち向かうはずだ」

ただし、自国第一の極右主義を標榜する彼女の主張を一部の有権者が受け入れるとしても、経済政策は「ほとんどが支離滅裂」だ。マクロンが勝機を広げられるのはそこだ。つまりフランスがグローバル経済から手を引けば、置き去りにされた労働者層はさらに逼迫するのだと、有権者を説き伏せればよい。ただし彼は既存政党の後ろ盾なくして、それをやってのける必要がある。それも1年前に「前進!」の結成にこぎつけたばかりの身で。

異例の勢力図

逆に決選投票から姿を消したのは、過去何十年もフランスの政治を動かしてきた主流派の2大政党だ。フランスの有権者の政治への関心の高さは健在で、今回の第1回投票も日曜午後の時点で投票率が69%に達した。だが既存政党の政治家にうんざりしている有権者は、共和党と社会党の現職議員を敬遠する(支持率が1ケタ台に落ちた社会党のフランソワ・オランド大統領は、そもそも立候補を見送った)。

伝統的な左右の既存政党は機能不全に陥っていると、ルフェビュールは言う。フランス人にとって「自分たちがどの政党を支持するかは、もはや重要でなくなった」。

2大政党が擁立した大統領候補が敗退したのを見ても、その傾向は明らかだ。つい数カ月前には次期大統領の最有力候補と目された共和党候補フランソワ・フィヨンも、選挙戦終盤で大躍進した極左・左翼党の古参ジャンリュック・メランションに肉薄されて力尽きた(フィヨンは選挙中、100万ユーロに上る妻子の架空雇用疑惑で訴追されて支持率が伸び悩んでいた)。社会党候補のブノワ・アモン前国民教育相も、得票率わずか6.5%だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中