最新記事

韓国

朴槿恵大統領、韓国憲法裁が罷免を決定 疑惑発覚から半年で

2017年3月10日(金)19時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

今回のパク大統領の罷免により、60日以内、5月9日までに大統領選挙が行われる。それまでは、現在大統領代行を務めている黄教安(以下、ファン・ギョアン)首相が引き続き国政を率いることになる。

今回のパク大統領の罷免についてファン・ギョアン大統領代行は、次のような国民に向けた談話を発表した。

「ここ数ヵ月間、韓国社会は深刻な葛藤と対立の中に置かれていた。週末ごとにソウルの中心部で国民が二つに分かれ、弾劾について賛否を問う集会が行われた。大韓民国は、法治主義を根幹とする自由民主国家だ。 私たち皆が憲法裁判所の決定を尊重しなければならない。今も到底納得できず、承服するのは難しいという方もいた。しかし、今日これまでの葛藤と対立を終えなければならない」

この言葉が示すように韓国国内は10日、パク大統領の罷免を喜ぶ反パク派と、嘆き悲しむ親パク派の緊張が続いた。憲法裁判所の周囲は警察官4000人が厳重に警備していたが、大統領罷免の決定が流れると、納得できない親パク派が憲法裁判所に突入しようと警官隊に石やペットボトルを投げつけ、この混乱でデモ隊の中から2人の死者が出た。また、親パク派が、光化門のろうそく集会に参加しようと通りかかった若者を取り囲んで暴行するなど、混乱が続いた。

もちろん、韓国の抱える問題は国民の対立だけではない。パク大統領の任期中に、決めた高高度ミサイル防衛システムTHAADの韓国配備は、10日の弾劾審判を前に、急ピッチで準備が進められ、3月6日には砲台システムの一部が早くも韓国に到着している。これに関して安全保障上の重大な脅威と一貫して反対を唱えていた中国政府は、旅行業界に韓国行き旅行商品の販売中止を命じたほか、サード配備予定地を提供したロッテの中国国内のスーパーを消防法違反で営業停止を命じるなど、強行な圧力をかけている。

一方、日本との関係もパク政権が誕生してから不協和音が続いている。就任以来、日本に対して冷淡な姿勢を見せていたパク大統領だったが、2015年12月に日本政府と慰安婦問題に関する合意を交わし、一時は両国は関係改善に動き出すかに見えた。ところがパク大統領が弾劾決議を受けて職務停止状態になると、韓国国内からはパク大統領が日本と進めた日韓合意は無効という声がでてきた。さらに昨年12月には釜山の日本総領事館裏に慰安婦問題の象徴とされる少女像が設置されたことから、日本政府は1月6日に駐在韓国大使を召還。2か月経った今も両国関係は改善の兆しがみえていない。

「私は大韓民国と結婚した」と語り、朴正煕大統領の娘として育った大統領府に34年ぶりに戻ってきたパク・クネ。だが在任4年の結果残したものは、韓国憲政史上初の罷免された大統領という汚名と、国政の停滞という負の遺産でしかなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、EUが凍結資産を接収すれば「痛みを伴う対応

ビジネス

英国フルタイム賃金の伸び4.3%、コロナ禍後で最低

ビジネス

ユニリーバ、第3四半期売上高が予想上回る 北米でヘ

ワールド

「トランプ氏は政敵を標的」と過半数認識、分断懸念も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 9
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中