最新記事

プーチン訪日を批判報道する中国――対中包囲網警戒も

2016年12月19日(月)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

山口県長門市の温泉旅館では2人で「密談」も(12月15日) Alexander Zemlianichenko -REUTERS

 プーチン大統領の訪日に中国は強い警戒心を持ち、連日報道していた。特に読売新聞の取材や朝日新聞の報道、ロシアの報道官が会談後に漏らした言葉などに注目。警戒の対象は米露接近と日露接近による対中包囲網だ。

日本の報道を逆利用――「領土問題は存在せず」

 なんといっても大きかったのは、プーチン大統領が読売新聞社とNNN(日本テレビ放送網)の取材を受けて、北方領土問題に関して回答した「領土問題は存在せず」という言葉だ。

 筆者もその取材全文を<1>から<5>まで、すべて読んだが、その<2>には、たしかに明確に「ロシアには、領土問題はまったくないと思っている。ロシアとの間に領土問題があると考えているのは日本だ」というプーチン大統領の言葉がある。

 この全文が日本語のインターネットで公開されたのが2016年12月14日03時46分(取材したのは12月7日)。

 すると、その前の時間の「2016-12-13 23:22:00」には「天涯社区」で「プーチン、日本の独占取材を受け:日露間には領土問題は存在しない。日本だけがあると思っている(転載)」で既に転載するというはやわざも見られた。筆者は認識していないが、日本テレビで短い情報を発信したのだろうか。そうでないと、こういう時間の逆転現象は起きない。ネットによれば、日テレのNEWS24が「プーチン大統領 特別インタビュー全文」の全過程を報道したのは、「2016年12月14日 17:42」のようである。

 14日には「騰訊視頻(チャンネル)」が「プーチン、明日訪日  日本メディアの独占取材で日露間に領土問題存在せず」というテレビ報道をしており(15秒間、広告を我慢すると始まる)、CCTVや他のウェブサイトも一気に「領土問題は存在しない」としたプーチンの言葉を「鬼の首でも取ったように」報道した。

 日本と尖閣諸島において領土問題を抱えている中国としては、プーチン大統領がどう出るかは、大きな関心事だ。

 だから、CCTVでは、15日に安倍首相とプーチン大統領が少人数で行なった会談における「極秘」の会話に関して、ロシア大統領府のペスコフ報道官が「二人の間では、そもそも領土問題は語られなかった」と話しているという事実も大々的に報道した。

 ネットにも「ロシア大統領スポークスマン:日露首脳会談では領土主権問題は話されなかった」(2016-12-16 15:30:53)など、数多くの関連報道が見られる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

大手3銀の今期純利益3.3兆円、最高益更新へ 資金

ワールド

ニューカレドニアの暴動で3人死亡、仏議会の選挙制度

ワールド

今年のユーロ圏成長率、欧州委は2月の予想維持 物価

ワールド

ウクライナ大統領、外遊取りやめ 東部戦況悪化が影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中