最新記事

アメリカ政治

トランプが仕掛ける「台湾カード」 中国揺さぶりのもつ危険性

2016年12月7日(水)11時16分

12月5日、トランプ次期米大統領(写真)は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。ペンシルベニア州で11月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

 ドナルド・トランプ次期米大統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。

 米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直接コンタクトを取っていなかった。

 トランプ氏と蔡氏の電話会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて米国政府に抗議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和、民主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を損ないかねないと警告した。

 もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘する。

 同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏との10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変更を示すものではないとして、火消しに追われている。

 しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であるスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お好きなように」と述べた。

 元米高官を含む専門家らは、台湾首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないとみている。

 トランプ政権の国務長官候補の1人とみられているジョン・ハンツマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、対中政策において台湾は「有益なレバレッジポイント」であることが証明されるかもしれないと語った。

 同じく国務長官候補に挙がっているトランプ氏のアドバイザーで対中タカ派のピーター・ナバロ氏とジョン・ボルトン元国連大使は共に、アジアの領有権問題で主張を強める中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を提案している。

 だがこうした戦略は非常にリスクを伴うと、オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)で東アジア政策を統括するアジア上級部長を務めたエバン・メデイロス氏は指摘。「中国は1990年代半ばに、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと非常に明確に伝えてきた。これは米国が試すべき問題だろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同

ワールド

ウクライナ大統領18日訪米へ、うまくいけばプーチン

ワールド

トランプ氏、ウクライナに合意促す 米ロ首脳会談は停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中