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米大統領選

中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?

2016年11月7日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 ●TPPに関して、二人とも反対の姿勢を取っている。ヒラリーは現役時代には賛成だったのに、選挙のために反対を表明し始めた。TPPには、経済的に中国包囲網を形成しようという意図が含まれている。そのTPPが、主導国のアメリカから崩壊するのであれば、中国にとっては非常に有利になる。

 ●外交面だけでなく、経済面においても、アメリカはアジア回帰と中国包囲網形成のために、膨大な経費を注ぎ、自国民に多大な犠牲を払わせてきた。そのツケが国内経済と中産階級の弱体化を招いてきたという側面もある。「世界の警察」というアメリカの時代は終わっている。アメリカのプレゼンスを国際社会で見せつけるために国民の税金を使わずに、自国の体力を強化することに注げば、長期的には、その方が中国にとっては脅威となる。

 ●トランプは、「中国が自国の復興を取り戻すためにアメリカを利用している」と言っている。他国のせいにすれば、アメリカは自分自身の責任を逃れることができると思って、中国や移民などをやり玉に挙げ、排他的な方向に動こうとしている。

 ●中国はこの日に備えて、AIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路(陸と海のシルクロード)構想あるいは上海協力機構などによって、ロシアや東南アジア諸国を含めた地球の西半分を押さえている。だから怖くない。

 ●それよりも、トランプが当選した場合、何が起きるか予測できない要素が増えて金融不安を招く可能性があり、それが中国に影響してきて中国の金融リスクを招く危険性を考えると、その方が怖い。

政治体制に関して――果たして民主主義は強いのか?

 ●西側諸国は中国が共産党の一党支配体制を「独裁」だと非難する。しかし、果たして民主主義がいいのだろうか?今般のアメリカ大統領選を見ていると、「民主主義と資本主義の末路」を見る思いだ。二人の候補者の間では国策とか民生に関する建設的な議論はなく、ただ票を集めるためにテレビ討論会をやっては、相手のスキャンダル合戦ばかり。これを「自由」と称し「民主主義」と称するのならば、「民主主義」は要らない。

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