最新記事

金融

米FRBイエレン議長が来月利上げ示唆、「比較的早期適切」

2016年11月18日(金)10時19分

 11月17日、イエレン米FRB議長は、比較的早期に利上げする可能性があるとの認識を示した。写真はワシントンで9月撮影(2016年 ロイター/Gary Cameron/File photo)

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は議会合同経済委員会で証言し、経済指標が引き続き労働市場の改善とインフレ加速を示せば、FRBは「比較的早期に」利上げする可能性があるとの認識を示した。12月利上げを明確に示唆した発言とみられている。

FRB当局者は今月の会合で利上げの根拠は強まってきたと判断したと指摘。「利上げは比較的早期に適切となるだろう」とした。

米経済は緩やかな成長軌道にあるもようと述べ、完全雇用と2%のインフレ目標の達成を促すとした。

議長は、米経済は労働市場への新規参入者を十分吸収できるペースで雇用を創出していると述べるなど、米景気に対し総じて明るい見方を示した。賃金の伸びは「加速している」としたほか、個人消費も「緩やかな増加が続いている」とし、経済成長が弱含んだ上期から持ち直す一助となると指摘した。中国、欧州経済のぜい弱さを踏まえ、これまで主要リスクとされてきた海外経済についても安定するとの見方を示した。

「11月会合以降に見られる証拠は、成長が力強さを増し労働市場が改善するとともに、インフレ率も上昇するとのわれわれの想定に沿っている」とし、「米経済の成長は上向いているもよう」と述べた。

トランプ次期政権下の財政政策次第では、FRBの基本シナリオは大きく変わる可能性もあるが、証言原稿では大統領選挙の結果に関する言及はなかった。

ただ証言では、トランプ氏が巨額減税やインフラ投資を掲げていることとについて、米労働市場が完全雇用に近付きつつあり、インフレ率がFRBの目標である2%に向かい上昇する可能性があることに留意し、「長期的な成長と生産性押し上げ」に重点を置く政策を実施すべきとの考えを示した。

さらに、2018年に任期を迎えるまで議長職にとどまる意向を示したほか、FRBは見通しを修正する構えとの立場を示し、「経済政策が一段と明確になれば、雇用やインフレへの影響を勘案する必要があり、おそらく見通しを調整する」とした。

また、FRBの政治からの独立が責務遂行上不可欠とするFRB当局者のコンセンサスをあらためて示し、金融政策への監視強化をけん制。「中銀が長期的視点を維持できる国でより良好な結果が出ていることを示す明確な証拠が存在する」とし、「経済の健全性のためには、中銀は時として不人気な政策を講じなくてはならないことがある」と語った。

トランプ氏が金融規制の緩和を主張していることについては、金融危機の再発を招きかねないとし、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の「時計の針を巻き戻す」ことに警鐘を鳴らした。

現在0.25─0.5%としているフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標については、経済活動を刺激しているとし、米経済にはインフレの懸念すべき兆候が出るまで「回復余地がなおある」とした。

その上で、現時点ではFRBが「近い将来、後手に回るリスクは限られているようだ」とし、FF金利の段階的な引き上げしか正当化しないとの認識を示した。ただ「FF金利の適切な軌道は、見通しの変化に応じて変わる」とした。



[ワシントン 17日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測

ワールド

インドネシア大統領、26年予算提出 3年以内の財政

ワールド

米政権、年間の難民受け入れ上限4万人に 南アの白人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 8
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中