最新記事

ドイツ銀行

ドイツ銀の苦境鮮明、選挙控え救済に抵抗感 資金引き揚げ報道も

2016年9月30日(金)09時40分

9月29日、ドイツ銀行(写真)を取り巻く環境が厳しさを増している。2013年12月撮影(2016年 ロイター/Luke MacGregor)

 ドイツ銀行を取り巻く環境が厳しさを増している。モーゲージ担保証券(MBS)の不正販売問題で米司法省から巨額の制裁金の支払いを求められたことに端を発する財務不安から公的支援を受けるとの観測も浮上しているが、総選挙を来年に控え、議員は不人気な銀行救済に反対する姿勢を強めている。

 またブルームバーグは29日、ドイツ銀のプライムブローカーサービスを利用していたファンドが今週、保有するデリバティブ(金融派生商品)の一部を他の金融機関に移したと報じた。

 これを嫌気し、米国株式市場でドイツ銀の米預託証券(ADR)は大商いのなか8%超急落し、最安値を更新した。

 ドイツ銀行の広報担当者は、トレーディング顧客の大半は同社の安定的な財務状況や現在のマクロ経済状況などを理解していると確信しているとコメント。不安の払しょくに努めた。

 一方、ドイツで連立政権の一角を占めるバイエルン州の保守政党キリスト教社会同盟(CSU)のハンス・ミヒャエルバッハ議員は、政府は経営難の銀行への支援は行わないと述べた。

 メルケル独首相はこの日、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁と会談。来年の総選挙を控え、メルケル氏の支持率は寛容な難民政策が国民の反発を招き、急低下している。昨今の金融危機は自力で乗り越えたドイツ銀行だが、公的救済を余儀なくされる事態となれば、ドイツの指導者として金融危機を乗り切ったとのメルケル氏の高い評判に疑問符が付きかねない。

 こうした事情を背景に、ドイツ政府はすでに納税者による銀行救済を計画しているとの見方を強く否定している。

 また金融危機時に支援を受けたコメルツ銀行は、正社員の2割以上に当たる9600人の人員削減と当面の配当支払い停止を発表した。これを嫌気し同行株価は3.1%下落。ドイツのクセトラDAX指数<.GDAXI>の構成銘柄の中で最も大きく落ち込んだ。

 ドイツ銀行のヘッジファンド部門のバリー・ボウザノ会長はCNBCとのインタビューで、ヘッジファンドは依然利益をあげている、と述べた上で、同行に対する感じ方について問題があることは間違いない、と語った。

 さらに、同行のウェルス・マネジメント部門代表ファブリジオ・カメリ氏は、顧客を安心させようと努めており、目立った資金の流出はみられない、と説明した。

 ドイツ銀行は、トレーディングの顧客からは引き続き支持が得られているとし「大半はわれわれの安定的な財務状況、現在のマクロ経済環境、米国での訴訟手続き、および、われわれの戦略の進展を理解していると確信している」との声明を発表した。

[ベルリン 29日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中