最新記事

インターネット

違法ダウンロード情報で新たな広告市場できるか

2016年9月23日(金)08時00分

9月14日、いくつかの米新興企業は、インターネット上で違法に映画やテレビ番組、音楽をストリーミングする何億もの人々についてのデータを収集することによって、新たな広告市場の創造を目指している。写真はパソコンを手にする人と映写されたコード。ワルシャワで2013年6月撮影(2016年 ロイター/Kacper Pempel)

 いくつかの米新興企業は、インターネット上で違法に映画やテレビ番組、音楽をストリーミングする何億もの人々についてのデータを収集することによって、新たな広告市場の創造を目指している。

 とはいえ、業界のタブーとも言える「コンテンツを盗む」消費者に対して商品を売り込む機会を得るために、大手ブランド企業が喜んで金を払うかどうかが、この小さな産業の運命を決めることになる。

 この新ビジネスは、違法にコンテンツをダウンロードした人々のデジタル上の行動足跡を測定して追跡する。このコンセプトはまだ緒についたばかりで、メディア業界内部では懐疑心を持って迎えられているものの、一握りの企業はすでに一足早く進出しつつある。

 こうした新興企業の中で最大手のTru Optikは2月、広告世界最大手の英WPP傘下となるグループエムの1部門でニューヨークに拠点を置くマインドシェアと、データを共有する契約を交わした。

 設立3年のTru Optikは、ビットトレントなどのファイル共有ソフトを利用して、テレビ番組や映画を違法に視聴・共有した約5億人分のデータベースを構築。これらのデータは、彼らが訪れたウエブサイトや郵便番号、購入履歴など他のユーザーデータと統合される。

 マインドシェアの顧客データ戦略を担当するSameer Modha氏によると、同社は、そうしたデータを使って、新たなジャンルの映画や番組を効果的に特定し、そのジャンルのファン層に対してメディア顧客が行う宣伝活動を支援する。

 データ分析を通じて同社は、例えば、ウエスタンやサイエンス・フィクションを含めたさまざまなジャンルの番組や映画において「悲惨な代替現実で孤立している主人公」を描いたストーリーを好むファン層が存在していることを最近確認したという。

 こうしたセグメンテーション(細分化)手法を活用することで、マインドシェアは、メディア顧客が関心度合いの高いユーザーに対して番組や映画の宣伝を流すことを支援できる。

 ただ、Modha氏は、違法な視聴者に対して直接広告を流すことはないと強調。利用者の行動を理解することは、その行為を奨励することと同じではないと話す。

「もし、私が車を盗んだ人々にインタビューをする場合、それは自動車窃盗を見逃していることになるのか。それとも、その状況を理解しようとしているのか」と同氏は問う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想

ワールド

米大使召喚は中ロの影響力拡大許す、民主議員がトラン

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中