最新記事

インタビュー

世界的にまだ新しい手法「コ・クリエイション」の5つの原則

2016年8月26日(金)18時07分
WORKSIGHT

ファシリテーターとして調整役を果たす

 包摂性を重視する一方で、それぞれのステークホルダーが自分たちの立場に固執して意見を述べるだけでは収拾がつかなくなる恐れがある。議論を建設的なものにするために、デザイナーはファシリテーターとして中立的な役割を担うことを心がけておきたい。GEではデザインの視点でワークショップとコ・クリエイションのプロセス全体の両方を導くファシリテーションを重視している。

 サービスデザインのテクニック、例えば「どうすれば私たちは○○できるか(How Might We)」という思考法や、ペルソナ、マッピングといった手法は、コ・クリエイションのワークショップの初期段階で非常に役立つ。参加者の認識や課題のレベルを同じ地平にセットできるうえ、議論の推進、タイムマネジメント、会話のペースのコントロールなどにおいても効果があるとラウ氏は指摘する。スピード感を持つことがビジネスでは重要だ。

 GEでは、参加者全員が共通のペルソナとゴールを想定しつつ、特定のエンドユーザーに向けた解決策を考えるようにすることがよい結果をもたらしている。共通の目的に焦点を当て、自らの視点を相対化することにつながるのだろう。

wsRau_1-pic1.jpg

「Service Design Japan Conference 2016」(Service Design Network日本支部主催)が、2016年1月に横浜で開催された。ラウ氏はここでプレゼンテーションを行った。本稿はその内容をベースにしている。

全てのタッチポイントをデザインの力でより良くする

 最後、5つ目の原則は、あますところのない全てのタッチポイントをデザインの力でより良くすることだ。そのためには地に足の着いた施策が必要となる。

「デザイナーとノンデザイナーがともに快適に仕事をするには、互いのやり方を見せ合うことです」とラウ氏は言う。例えばGEでは、顧客とのコ・クリエイションのワークショップが1~5日間開かれることがあるという。デザインの挑戦についての話し合いやコ・クリエイション、ロードマップの共同制作にそれだけの時間が必要というわけだ。

 プロジェクト・マネジメントの手法と同じようにデザイン分野のツールを活用することで、さまざまな要素や機能を統合したシームレスな会話が可能となる。

 GEではデザインのプロセスを、「課題発見」「デザイン」「実施」「評価」の順に表している。コ・クリエイションがどこで起こるかといえば、おおむね最初の「課題発見」の段階である。しかし、実際にはもっと早い段階でも起こり得る。

「もし、コ・クリエイションが課題発見よりも前、プロジェクトがまだ立ち上がらないうちに起こったとしたらどうでしょう? セールスチームとデザインチームが協力して顧客と戦略的な連携を築くことができれば、コ・クリエイションの成果はより実りあるものとなるでしょう。それが仮にエンドユーザーのリサーチを通した課題発見の段階だとしたら、デザインに入る前にコンセプトを練って検証することもできる。エンドユーザーも含めたコ・クリエイションによって、綿密に評価・検証されたデザインが実現できるということです」(ラウ氏)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中