最新記事

東シナ海

中国衝撃、尖閣漁船衝突

2016年8月15日(月)11時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国外交部(外務省)の華春瑩・報道官 Jason Lee-REUTERS

 11日に尖閣沖で起きた中国漁船とギリシャ貨物船の衝突により、中国漁民を日本の海保が救助したのを受け、中国の海警は何をしていたのかと中国のネットが炎上。面目丸つぶれの中国政府は日本へ謝意。衝撃が走った。

尖閣沖で衝突事故

 第11管区海上保安庁によると、11日5時頃、尖閣諸島沖の公海上で、中国漁船「○晋漁05891」(○:門構えに虫。みん)とギリシャ船籍の貨物船「ANANGEL COURAGE」が衝突した。日本の海上保安庁の巡視船は沈没した中国漁船の船員救助に尽力し、船員6人が救助され中国側に引き渡された。

 11日の中国メディアは、日本のメディア報道をなぞる形で、ただ単に文字で「中国側は謝意を表したとのこと」と、他人事のように書き、炎上するネットのコメントの削除に躍起になっていた。

 しかし中国政府を非難するコメントは増えるばかりで、中国大陸のネットが炎上し始めた。

 すると11日の夜になって、中国外交部(外務省)の華春瑩・報道官(外交部新聞司副司長)は「日本側の協力と人道主義の精神に称賛の意を表す」と明確に口頭で表明するところに追い込まれたのである。

 それまでは「関係部門が協力的な姿勢で適切に処理することを望む」としか言っていなかった中国が、なぜ「人道主義の精神に称賛の意を表す」という表現を用いるに至ったのか、ネットパワーを検証してみよう。

炎上する中国大陸のネット

 2016年6月統計で、中国のネットユーザーの数は7.1億人に達したが、多くのユーザーが尖閣沖における中国漁船の沈没と日本による人命救助に関して、中国政府への不満をぶつけた。

 11日の昼間までにネットに溢れていたコメントのうちの、いくつかの例をご紹介しよう。以下に書いてある地域名はユーザーの登録地名である。ウェブサイトによっては、書いてない場合もある。

●天津市:感謝すべきことは感謝するというのが礼儀だろう。相手(日本)は我が国の漁民を助けたのだから、感謝するのが道理だ。

●河南省:日本が今回やったことは、非常に人道的だ。感謝すべきだ。

●陝西省:ありがとう! 命を尊重してくれたことを感謝する。

●四川省:いつ、どこであろうとも、人道主義は称賛に値する。

●山東省:筋が通った強さと制度によって作られた民度の高い国民の善良さ。(筆者注:日本国民のことを指していると推測される。)

●上海市:救助する能力があるってことは、結局、制御する力も持っているってことになるんじゃないのかい?

●河南省:中国の救助船は、どこに行ってたの?

●浙江省:わが中国の海警船は何をしていたんだい?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB議長候補のウォラー理事と面会 「

ビジネス

長期金利が2%に上昇、19年半ぶり高水準 国債先物

ビジネス

日銀が利上げ決定、政策金利は30年ぶり高水準に 賃

ビジネス

フェデックス、MD-11運航停止で最大1.75億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中