最新記事

米金利

イエレン米FRB議長「利上げ論拠強まった」、9月の可能性も

2016年8月27日(土)12時48分

 8月26日、イエレン米FRB議長は、ワイオミング州ジャクソンホールで講演した。写真はワシントンで6月撮影(2016年 ロイター/Carlos Barria)

米連邦準備理事会(FRB)が利上げ実施に近付いている様相が鮮明になってきた。イエレンFRB議長は26日、ワイオミング州ジャクソンホールでの年次経済シンポジウムで「利上げへの論拠が強まってきた」と言明。他のFRB当局者も利上げに意欲を示し、早ければ9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切る可能性が出てきた。

イエレン議長はこの日の講演で「FRBが目標とする最大雇用と物価安定に米経済は近づいている」と言明。足元で雇用が持ち直している点に言及し、FRBは経済が今後も拡大を続けると予想していると述べた。

その上で「労働市場における継続的な底堅い動きや経済、インフレ動向の見通しを踏まえ、フェデラル・ファンド(FF)金利を引き上げる論拠が過去数カ月間で強まったと確信する」と述べた。同時に利上げは「段階的」であるべきとも強調した。

ただ議長は、利上げを決定する上でFRBは何を確認する必要があるのか、明確な道筋は示さなかった。FRBが早期利上げに踏み切るのか、あるいは一段と慎重に対応するかをめぐっては、FRB内でも意見が大きく分かれており、市場は利上げ時期に関する中銀の指針説明に懐疑的な姿勢を示している。

ソシエテ・ジェネラル(ワシントン)の米金利戦略部長、スバドラ・ラジャパ氏は「議長は、割合早い時期の利上げに含みを残しただけだ」と話す。

イエレン議長の講演後、フィッシャーFRB副議長はCNBCとのインタビューで、9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予期すべきかとの質問に対し、「イエレン議長がこの日の講演で述べたことは、この2つの質問に対し『イエス』と答えることと整合性が取れている」と語った。ただ、こうしたことは経済指標次第となるとの見方も示した。

アトランタ地区連銀のロックハート総裁は、年内に2回の利上げが可能との考えを示したほか、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、インフレ高進の対応で後手に回らぬよう早期利上げは理にかなっていると語った。

主要通貨に対するドル指数は当初急伸。その後、イエレン議長が利上げ時期にコミットしていないとの印象を与えたことで、ドルは値を消す展開となったものの、フィッシャー副議長らの発言を受け、再び買いが戻った。

利上げをめぐり、FRB内でなお見解が分かれていることも浮き彫りとなった。

パウエルFRB理事はブルームバーグテレビに対し、FRBは利上げに関して慎重かつ忍耐強く臨むべきで、利上げに踏み切る前にインフレ率が上昇することを確認したいと語った。「われわれには忍耐強く構える余裕があるが、2%の目標に向けたインフレの進展や労働市場の引き締まり、力強い成長など十分な材料がそろえば、その機会を活かすべきだ」と語った。

イエレン議長は今後数年の金利見通しをめぐり、FRB内に幅広い見解があると指摘。現在の予測では、2017年末時点の金利水準が70%の確率で0━3.75%、2018年末時点が70%の確率で0━4.5%と見込まれていると明らかにした。

短期金利先物相場が織り込む利上げ確率は、12月が五分五分で、イエレン議長の発言前からほぼ変わらず。9、11月の予想確率は低下した。



[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中