最新記事

財政赤字

OECD加盟国の経済見通し発表、日本の財政は主要リスク、信認喪失なら世界経済に波及

2016年6月2日(木)10時44分

 6月1日、経済協力開発機構(OECD)は、加盟国経済の見通し「エコノミックアウトルック」を公表した。日本については「前例なき高水準の公的債務が主要リスクのひとつ」だと指摘した。写真はパリのOECD本部。2009年9月撮影(2016年 ロイター/Charles Platiau)

[東京 1日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は1日、加盟国経済の見通し「エコノミックアウトルック」を公表した。日本については「前例なき高水準の公的債務が主要リスクのひとつ」だと指摘した。

財政健全化目標達成のために消費税や所得税など様々な税率を引き上げて歳入増を実行に移さない限り、財政持続可能性に関する信認が失われ、世界経済に大きく波及するとの見方を示した。

この見通しは、日本については2017年4月の消費税率引き上げを前提にしている。その上で、予定通りの消費増税と、それに伴い必要となるかもしれない財政刺激策を実施したとしても、2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標を達成する軌道には達していないとした。社会保障支出の増加抑制策や消費税率の漸増、所得税、法人税の課税ベース拡大、環境税引き上げなどの歳入増加策など、詳細かつ具体的な戦略を実行に移さない限り、財政の持続可能性に関する信頼が失われると警告した。そして世界経済への大きな波及効果を伴いながら、日本の金融部門、実体経済の安定が損なわれるだろうとの見通しを示した。

さらに、生産性を高め、経済成長率を2%に高めていくためには、大胆な改革が必要だと指摘。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日中韓自由貿易協定(FTA)の締結が有益だとした。

企業部門の活性化にはコーポレートガバナンス強化の必要性を指摘した。

経済成長は、16年はプラス0.7%、17年は0.4%と予測している。

世界経済については、金融危機から8年経過しても経済回復は失望を誘うほど弱いとしたうえで、16年は前年と同じ3%成長、17年は3.3%成長との見通しを示した。新興国での一次産品価格の急速な下落、先進国での緩慢な賃金増加と投資の低迷などを要因に挙げた。

世界経済が低成長から抜け出すには、財政・構造改革、金融緩和と合わせた包括的な政策が必要だとしたが、追加的金融緩和は過去と比較して有効ではなく、状況によっては逆効果になり得ると指摘した。他方で、財政拡大は低金利により一時的にその余地が拡大しているとして、公共投資を引き上げる国際的協調行動により、財政の持続的可能性を損なうことなく需要が拡大するだろうと見通した。



ロイター


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない

ビジネス

米キャタピラー第1四半期、収益が予想下回る 関税影

ビジネス

セブン&アイ、クシュタールと秘密保持契約を締結 資

ワールド

米・ウクライナ、鉱物資源協定に署名 復興投資基金設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中