最新記事

脱北者

北朝鮮レストラン「美貌ウェイトレス」が暴く金正恩体制の脆さ(1)

国家を裏切らない前提だったウェイトレス13人の集団脱北を受け、「恐怖政治」の手足である北朝鮮の秘密警察が統制を強めている

2016年4月18日(月)17時04分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

追いつめられる金正恩 韓国政府によるウェイトレス集団脱北の公表は、与党の選挙対策もあったと思われるが、核とミサイルで暴走する金正恩第一書記(中央)へのプレッシャーもその目的だったはずだ(朝鮮中央通信〔KCNA〕が公表した写真、2014年撮影) KCNA-REUTERS

 今月8日、韓国政府によって、北朝鮮レストラン従業員13人が「集団脱北」したことが明かされた。一度に13人が脱北したのも異例だが、脱北から韓国入りまでスピーディーに動いた裏には、韓国政府の意図が強く働いていたようだ。すなわち、核とミサイルで暴走する金正恩氏に対してプレッシャーをかけることと、総選挙を与党が有利に戦うため、対北朝鮮経済制裁の実効性をアピールすることだ。

 その5日後に投開票が行われた韓国総選挙では、朴槿恵(パク・クネ)大統領を支える与党が惨敗したため、「集団脱北」の公表は、必ずしも成功したとはいえないが、金正恩体制の脆弱さを浮き彫りにしたことはまちがいない。

 なぜなら、本来、北朝鮮レストランで働くウェイトレスたちは、脱北しないという前提で、海外に派遣されているからだ。

 韓国人や一部の日本人の北朝鮮マニアの間で人気を呼ぶ北朝鮮レストランの美貌のウェイトレスらの多くは良家の出身だ。北朝鮮当局は、脱北しない、すなわち「北朝鮮を裏切らない」と判断した女性のみ派遣しているはずだが、彼女たちはリスク覚悟で、北朝鮮ではなく韓国で生きることを選んだ。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

 今回の集団脱北に、韓国の情報機関がなんらかの形で関与していたとしても、13人が最終的に脱北を決断した裏には、金正恩体制に対して多かれ少なかれ、不満を持ち、北朝鮮に展望がないことを知ったからだろう。

 そもそも、北朝鮮ウェイトレスの脱北は、これまでもたびたび起きている。監視下に置かれ、厳しい労働環境で働かされているとはいえ、一度中国で海外の空気と自由を知ってしまえば、国家への忠誠心など一挙に吹き飛んでしまうのかもしれない。

(参考記事:中国で失踪...北朝鮮「美人接待員」たちの素顔

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から

ワールド

ウクライナ和平交渉団が米国入り、トランプ政権高官と

ワールド

イラン指導者ハメネイ師、トランプ氏がデモ扇動と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 7
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 8
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 9
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 10
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中