最新記事

中国社会

景気減速の中国、消費者の節約志向が招く「修羅場」

中間層は高級志向から手ごろなブランドへと移行、貧困層は生活必需品すら切り詰める

2016年3月22日(火)10時38分

3月16日、中国では、消費者が財布のひもを締めるにつれ、小売業者は人員を削減し、事業拡大計画を遅らせ、在庫を積み上げている。上海のスーパーマーケットで10日撮影(2016年 ロイター/Aly Song)

 中国では、消費者が財布のひもを締めるにつれ、小売業者は人員を削減し、事業拡大計画を遅らせ、在庫を積み上げている。経済成長の原動力として消費者に期待していた同国にとって、大きな悩みの種となっている。

 経済成長が四半世紀ぶりの水準に鈍化するなか、中国の消費パターンには変化が見られる。裕福な中間層は高級志向から、より手ごろなブランドへと移行し、貧困層は生活必需品すら切り詰めている。

 中国小売業者の上位50社は今年初め、売り上げが6%減少。米調査会社カンター・ワールドパネルによると、即席めんや洗剤といった日用品の売り上げは昨年末、わずか1.8%の増加にとどまった。3年前の9%超増と比べると大幅に伸びが低下している。

 とりわけ安価な日用品の消費でさえ低迷していることが、中国の抱える難題を如実に表している。

「以前だったら、欲しいものがあれば買いに行った。だけど今は本当に必要なものしか買わない」と、上海の国有企業で働き、月収1万─1万5000元(約17万4000─26万1000円)を稼ぐというYang Shunjieさん(28)は語る。価格の安いインターネットで買い物をすることが多く、新しい服を買う場合はシーズン終わりのセールまで待つという。

 小売だけでなく、中国の持続的成長に頼っている高級品やファストフードチェーンなど多くの外資系企業にとって、こうした状況は問題となる。

 おむつのパンパースなどを同国で販売する米家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は1月、売り上げが2014年と比べて「著しく低下」したと発表。また、乳幼児向け栄養食品の米ミード・ジョンソン・ニュートリションは、価格競争と、より小規模な店舗やオンラインでの購入に消費の場が移行していることが売り上げを直撃したとしている。

「小売りに変化が起きている。高級品の売り上げは過去数年、非常に良かったが、それも終わりを迎えつつある。嗜好が変わってきている」と、キャピタル・エコノミクス(ロンドン)のアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は指摘した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ債の域外投資家純購入額、6月は598億ユーロ

ビジネス

6月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比3%

ビジネス

7月貿易収支は1175億円の赤字=財務省(ロイター

ワールド

EXCLUSIVE-米政権がTikTokアカウント
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中