最新記事

原発

福島原発の「グラウンド・ゼロ」、いまだ見えぬ廃炉への道のり

2016年3月12日(土)13時10分

 最近の視察に参加した政府当局者によれば、福島第1原発では現在、8000名以上の作業員が働いている。瓦礫の撤去、貯蔵タンクの建設、配管の設置、発電所の部分的撤去の準備など、各所に別れて作業しているため、敷地内では作業員が頻繁に行き交っている。

 作業の多くは、損傷し、高レベルの放射線に汚染された原子炉を冷却するための注水に関連している。その後、放射性物質を含む水は原子炉から汲み出され、敷地周辺で増殖しつつあるタンクに貯蔵される。

 福島第1原発の小野明所長によれば、100万トン近い汚染水をどう処理するかが、最大の課題の1つだという。

 小野所長は、貯蔵タンクから海洋への汚染水漏れに、深い懸念を抱いているという。汚染水の漏えいはこれまでにも数回発生し、政府に対する強い批判を引き起こしている。「ある意味、前回と同じような津波が来るとか、竜巻が起こるとかいうことよりも、確率的には(汚染水漏れは)非常に起こりうること」と小野所長は警戒する。

 東電はこれまでのところ、処理済み汚染水の海洋放出について地元漁業関係者の同意を得られずにいる。

 小野所長は、東電による事故処理作業は約10%完了したと推定している。廃炉プロセスには30─40年かかる可能性がある。だが専門家によれば、東電が燃料の位置を特定できないあいだは、進捗状況や最終的な廃炉費用を評価することはできないという。

 宇宙から降り注ぐ小さな素粒子「ミュー粒子」を利用する方法が大いに喧伝されていたが、溶融燃料の位置についてはほとんど何も情報が得られなかった。原子炉の一つに投入された最後のロボットは、粒子の粗い画像を送ってきただけで、その後故障してしまった。

凍土壁

 東電は、損傷した原子炉の基礎部分に地下水が流入して汚染されることを防ぐため、世界最大の凍土壁を構築している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 27年6月適用開始=

ビジネス

米耐久財受注、10月は2.2%減に反転 コア資本財

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中