最新記事

中国経済

「世界の工場」中国に淘汰の兆し

経済成長の原動力となってきた製造業からの転換を図りたいが、消費者の職も必要という中国指導者のジレンマ

2016年3月2日(水)10時52分

2月29日、春節(旧正月)の長い休暇を終えて、中国製造業の中心地に戻ってきた多くの出稼ぎ労働者は、先の見えない将来に直面している。写真は河北省の製鉄所で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 春節(旧正月)の長い休暇を終えて、中国製造業の中心地に戻ってきた多くの出稼ぎ労働者は、先の見えない将来に直面している。とりわけ小規模な工場が、受注低迷と在庫増加に苦しんでいるからだ。

 中国輸出の約4分の1を占め、「世界の工場」と称される広東省の珠江デルタ──。ここで働く労働者や経営者によれば、2週間に及ぶ春節休暇後の製造ラインの稼働ペースは、例年よりも緩やかだという。

 同省東莞市にある西城工業区では、壊れた機械が散在し廃墟となった工場がいくつか見られる。また、工業用地とされる区画も、村人たちが野菜を作るために使われたりしている。これらは中国製品に対する需要が弱まっている兆しであり、事業閉鎖を強いられたり賃金を圧迫している。

 「給料の良い工場を見つけるのが私たちの望み」と話すのは、1月に工場を解雇された18歳の女性。彼女は新たな仕事を求めて工場の門をたたく数多くの出稼ぎ労働者の1人だ。

 「でも気を付けなくては。多くの工場が食事や住む場所を提供していない。給料の支払いも遅れていたりする。だまされたくない」と、この女性が話すと、一緒にいた友人4人はうなずいた。

 こうした女性らの苦境は、これまで成長の原動力となってきた低価格製品を生み出す製造業からの転換をはかりたいが、次の成長基盤を支えてくれるであろう消費者の職も必要という中国指導者のジレンマを体現している。

 また、産業が整理され労働者の福利も圧迫されるなか、労働運動家は混乱が起きるリスクを指摘する。

製造業の縮小

 経済規模が一国のインドネシアよりも大きな広東省だが、その輸出の伸びは、政府による1月の報告書によれば、今年はわずか1%の見通しだという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中