最新記事

アジア

パクリもここまで来た仰天「ディズニーラオス」

今度はラオスに出現した本家無許可の偽テーマパークの厚顔無恥

2016年2月10日(水)17時00分
パトリック・ウィン

ここはどこ?  「海賊版天国」中国の石景山遊楽園はディズニーに告発されたが Doug Kanter-Bloomberg/GETTY IMAGES

 アメリカで大成功したチェーン店は、すぐにアジアでまねされる。中国のコーヒー店「バックススター」しかり、カンボジアのコンビニエンスストア「7エレファンツ」しかり──。

 そんな恥知らずな「なんちゃって」チェーンの殿堂に、新たなメンバーが仲間入りする。その名も「ディズニーラオス」だ。

【参考記事】ジンバブエ「アフリカ版ディズニーランド」の無謀

 アジアの緩い基準で考えても、このテーマパークはあり得ない。ラオスは、ベトナム戦争時代の不発弾が残る貧しい社会主義型の一党独裁国家で、建設予定地であるカムアン県は僻地だ。

「ディズニーラオス」は、スポーツ施設やホテルなどから成る大型開発計画の一環。プロジェクトのCEOは、東南アジアを代表する「驚異の1つ」になると胸を張る。

【参考記事】偽ディズニーショーから始まる金正恩の大改革

 ウォルト・ディズニー社は東南アジアの小国にテーマパークを造りたいと、本気で考えているのか? 答えはノーだ。「同地域を対象とする計画は今のところ存在しない」と、ディズニー側は取材に答えた。

 本家に認めてもらえなくても、ディズニーという単語は使えるはずだと開発業者はみている。「『ディズニーラオス』という名称は許されるべきだ。『ディズニーランド』と名乗ったら、著作権侵害に当たるだろうが」。事業に投資するソムジット・アリヤパポンはそう言う。「だが訴訟については懸念している」

 それも当然だ。かわいいキャラクターのイメージとは裏腹に、ディズニーはコピー商品を駆逐するためなら冷酷になるし、どれほど小さな違反も見逃さない。昨年9月には、ディズニーのキャラクターをかたどったケーキ用デコレーションを無許可で販売したとして、米ミシガン州に住むカップルを訴えた。

国営メディアで堂々発表

 そうしたなかでテーマパークをパクるとは実に大胆だ。世界的ブランドの名をかたって商売する際、店舗や施設を構えるのはリスクが高い。「海賊版天国」中国の業者は、偽のブランドバッグやウイスキーなど、持ち運びができる商品を好んで扱う。

 一方、ミャンマー(ビルマ)では、偽チェーンの店を構えてもほぼおとがめなし。東南アジアの店舗経営者は概して、知的所有権という概念になじみが薄い。だが小さな店なら監視の目を擦り抜けられても、巨大なテーマパークが追及の手を逃れるのは難しいのでは?

 ディズニーが取る対応のヒントになるのが、北京の郊外にある公営遊園地「石景山遊楽園」のケースだ。

 シンデレラ城風の建物がそびえ、ミッキーマウスやドナルドダックそっくりのマスコットがいる同園を、ディズニーは07年に告発。経営者側は「偶然の一致」だと主張したものの、ディズニーとの交渉の後、ひそかに類似マスコットを廃止した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中