最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

<ニューハンプシャー州予備選>左右のポピュリストを勝たせた米政界への怒り

共和党はトランプがトップに復活し、中道路線のケーシックが2位に浮上。民主党は負けたヒラリーが次回に起死回生を図る

2016年2月10日(水)16時10分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

有権者の怒り 共和党トランプ、民主党サンダースという左右双方の「アンチ・ワシントン」代表が支持を集めた Mike Segar-REUTERS

 9日に予備選が実施されたニューハンプシャー州は、1日に党員集会が開催されたアイオワ州と同様に、人口が少なくしたがって大統領選の代議員数も少ない。しかしその予備選は、共和党と民主党、両党の最終候補選びだけでなく、11月の大統領選本選をも左右すると言われている。

 その理由は3つある。

 1つ目は、先週のアイオワが中西部の典型的な「保守州」である一方、ニューハンプシャーは北東部の「リベラル州」であること。このため、両党ともに有権者の中のリベラル寄りのグループが「どんな選択をするか?」というトレンドが見えてくる。

 2つ目は、アイオワの結果を受けて各候補がどう行動し、有権者がどう判断をするかという結果から、選挙全体の「軌道修正」が行われる。つまり、アイオワで勝った候補も、ニューハンプシャーで負ければ勢いが止まるし、反対にニューハンプシャーを「逆転へ向けた再スタート」にすることもできる。

 3つ目は、このニューハンプシャーが「準オープン予備選」を採用していること。つまり支持政党を登録していない有権者も、投票所で「即席の支持政党宣言」をすれば投票できる。従って純然たる無党派層も「今回は共和党のレースで1票を行使しよう」ということが可能になる。このため政党支持者に加えて、無党派層の動向が結果に反映される。つまり11月の本選のシミュレーションという意味合いがある。

 こうした特性から、ニューハンプシャー州予備選は「予備選序盤戦の方向を決める」ものだと言われ、州民もそれを誇りにしている。事実、歴史上多くのドラマがこのニューハンプシャーで生まれている。例えば、76年のカーターの勝利、92年のクリントンの2位浮上、2012年のロムニーの勝利などは、その後の予備選勝利へのターニングポイントとなった。

 では、今回はどんな「ドラマ」があったのだろうか?

 まず民主党では、アイオワでヒラリー・クリントンに対して「ほぼ互角」にまで猛追したバーニー・サンダースが注目された。そうは言っても、サンダースにとっては、今回のニューハンプシャーは事実上の地元である。長い間、隣のバーモント州でバーリントン市の市長、そして同州選出の無所属上院議員として活動してきた評判は有名で、今回も事前の世論調査では支持率でヒラリーに10〜15%の大差をつけていた。「勝利は当然」というのが下馬評だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中