最新記事

米大統領選

ヒラリーの独壇場だった民主党討論会

トランプたたきに終始する共和党との違いをアピールし、民主党のイメージもアップ

2015年10月15日(木)16時57分
エミリー・カデイ

勝者の顔 電子メール問題でも動じず「助け舟」ドラマを呼び込んだヒラリー Lucy Nicholson--Reuters

 ヒラリー・クリントンは必要とあらば激しい論戦も辞さない。だが、2016年米大統領選挙に向けた民主党候補者の初の討論会では、最後まで冷静な態度を崩さず、他の候補の追い上げを許さなかった。

 現地時間の13日夜ラスベガスで行われた討論会には、クリントン前国務長官のほか、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)、マーティン・オマリー前メリーランド州知事、ジム・ウェッブ元上院議員(バージニア州選出)、リンカーン・チェイフィー前ロードアイランド州知事が参加。最有力候補のクリントン相手に、4人の対抗馬は次々にパンチを繰り出したが、クリントンはいずれも危なげなくかわして見せた。

 政治の場では異例のことに、最大のライバルであるサンダースがクリントンに助け舟を出す一幕もあった。

 クリントンは国務長官時代に私用のメールアカウントで公務のメールをやりとりしていた問題で質問攻めに遭ったが、冷静に対応して拍手を浴びた。このときサンダースが驚きの行動に出た。「これは偉大な政治とは言えないかもしれないが、言わせてもらおう。クリントン前国務長官は正しいと、私は思う」サンダースはそう言うと、クリントンのほうを見て、声のトーンを上げた。「あなたの電子メールをめぐるくだらない話には、アメリカ人は飽き飽きし、うんざりしている。もっと重要な問題を話し合おう」

 実際これは、サンダースにとって最も偉大な政治手法だったかもしれない。圧倒的に多くの民主党員は、共和党がクリントン攻撃のために電子メール・スキャンダルを利用していると考えている。その証拠に、サンダースの発言に聴衆は長々と拍手を送り、クリントンは彼に握手を求めた。このとき空気の読めないチェイフィーは、私的なアカウントを使用したことでクリントンの判断力が疑われたのは無理もないと発言。討論会を主催したCNNの司会者アンダーソン・クーパーがクリントンに何か言いたいことはあるかと水を向けると、クリントンはにっこり笑って「ノー」と答え、さらに大きな喝采を浴びて、満場は笑いに包まれた。

個人攻撃ばかり目立つ共和党とは大違い

 驚くほど穏やかなムードは幕切れまで続いた。意見が対立する場面もあったが、罵り合いとはほぼ無縁で、個人攻撃が目立った共和党の過去2回の討論会とは好対照をなした。刑法改正、有給休暇の法制化、格差の是正などでは、候補者たちの立場はほぼ一致。5人は互いを尊重しつつ、礼儀正しく意見を交わし、足の引っ張り合いに終始する共和党との違いをアピールした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中