最新記事

インフラ

中国鉄道、南米上陸の皮算用

2015年6月22日(月)10時59分
ブリアナ・リー

経済減速で両国に焦り

 昨年12 月には、中国系香港企業の資金拠出により、中米のニカラグアで大西洋と太平洋を結ぶ運河の建設が着工した。20年の開業を目指しており、アメリカの影響が強いパナマ運河を上回る規模の巨大運河になる見込みだ。しかしこのプロジェクトも、土地の権利と環境破壊の懸念をめぐり激しい反発を招いている。

 もちろん、ニカラグア運河と南米横断鉄道を同列に論じるべきではない。南米横断鉄道計画は、国外でのインフラ事業に豊富な経験を持つ中国政府が正式に支持しており、既存インフラとの競合関係もない。それでも、中国とブラジル、ペルーの政府が環境と人権への配慮を怠れば、ニカラグア運河やベロモンテ水力発電ダムのように猛反発を買いかねない。計画が具体化するにつれて反発はさらに強まるだろうと、ネイバは予測する。

 ただし、人権団体や環境保護団体の声が反映される可能性はあると、ネイバは言う。「中国はこれまで多くの国で同じようなプロジェクトを行い、地域コミュニティーや環境への配慮を怠って反発を招いてきた。今回の鉄道計画では、市民団体が求めれば、あらゆる段階で計画に関与することができるかもしれない」

 ブラジルとペルーの両政府の出方も注目する必要がある。経済が減速し、中国からの需要も縮小している状況で、「両国にはやや焦りが見られる」と、ギャラガーは言う。「焦るとずさんな行動を取りがちだ」

 鉄道は長期にわたるインフラ事業だ。すべての当事者が長い目でものを見て判断を下すべきだろう。

[2015年6月16日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中