最新記事

外交

イラン核協議の不都合な現実

交渉期限が近づく核協議だが、イランに核放棄を迫る国々は核大国という矛盾

2015年3月31日(火)15時29分
ピーター・ゲリング

合意できる? イランと6カ国側にはまだ隔たりが Brendan Smialowski-Pool-Reuters

 イランの核開発をめぐるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、ドイツの6カ国との協議が3月31日の期限を前に大詰めを迎えている。合意に達すれば、イランと欧米諸国の間の緊張緩和へ向けた大きな1歩となり得る半面、交渉が決裂に終わる可能性もある。

 交渉で欧米諸国は、イランが核開発やそれに関する研究を10年間凍結するという条件を求めている。その代わり、欧米はイランに対する経済制裁を解除する。

 大方の予測では合意は近いと見られているが、確実と断言するには程遠い。交渉が難航している主な論点は2つだ。まずイランは合意に署名したらすぐに制裁を解除してほしいが、アメリカなどは国内での官僚的手続きがあるためにできるかどうか分からない。

 第2の論点は、イランが次世代の遠心分離機に関する研究をどの程度まで続けることができるかだ。イランとしては核エネルギー開発を進めていきたいが、欧米諸国は核兵器の開発につながると警戒している。

 交渉は31日深夜まで行われる。

 一方、この交渉の裏には、不都合な現実がある。イランに核兵器の開発を断念するよう迫っている国のうち、ドイツを除いた5か国すべてが核武装している現実だ。アメリカは核弾頭を7000発以上、ロシアは8000以上、イギリスは200以上、中国は250以上、フランスは300以上所有している。イランとのいかなる合意も「人類を大きな危険にさらす」と憤っているイスラエルだって、80発以上を所有していると見られる。

 このように自分たちは核武装していながら、イランをどうやって説得できるというのか。国際社会の大きな矛盾の1つだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中

ワールド

世界貿易、AI導入で40%近く増加も 格差拡大のリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中