最新記事

東南アジア

「ポスト中国」インドネシア経済の病魔

ジョコ・ウィドド次期大統領が抱える最大の課題は「補助金漬け」社会の脱却だが

2014年9月8日(月)11時58分
キャスリーン・コールダーウッド

綱渡り 「庶民派」のジョコも燃料補助金の削減は避けて通れない Beawiharta-Reuters

 7月の選挙で勝利し、10月に就任を控えるインドネシアのジョコ・ウィドド次期大統領。家具輸出業で成功した経歴を持ち、選挙戦では政治改革や経済活性化などを公約に掲げて「庶民派」をアピールしたが、経済に関しては苦戦しそうだ。

 97年のアジア通貨危機で経済成長が止まり、インドネシア経済は補助金に依存してきたが、コストはかさむ一方だ。今年第1四半期の成長率は5・2%と4年ぶりの低い伸び。財政赤字のGDP比率は3%に近づき、なかでも燃料補助金は現在、政府支出の16%近くを占めている。

 高い補助金は財政を圧迫、インフラ整備などにしわ寄せが行く。国際機関は燃料価格を引き上げてインフラ投資を増やすよう迫っているが、インドネシアでは1億人以上が1日2ドル未満で生活している。補助金抑制のための燃料価格引き上げはこれまでも抗議デモや暴動を呼び、長期独裁政権を倒す引き金にもなった。

性急な改革は命取りに

 スカルノ初代大統領が公共投資による民間刺激策として始めた56年の第1次5カ年計画以来、インドネシアでは補助金が当たり前になっている。

 しかし97年のアジア通貨危機で大打撃を受け、当時のスハルト大統領はIMFの緊急融資の条件の1つとして生活必需品に対する補助金の削減に同意。灯油を25%、ディーゼル油を60%、ガソリンを71%値上げした。

 都市部ではこれに反発する抗議デモが数週間続き、暴動に発展。30年余り続いたスハルト独裁体制に終止符が打たれた。

 05年3月には、ユドヨノ大統領が補助金を削減して燃料価格を29%引き上げたところ、10都市で学生デモが発生。警官1万3000人が警戒のため出動する騒ぎになった。12年にも原油価格の高騰で燃料補助金が財政を圧迫し、政府は燃料価格の33%引き上げを発表したが、8万人以上が参加する暴力的なデモが起きた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で2%超安 堅調な米経済指標受け

ワールド

米大統領選でトランプ氏支持、ブラックストーンCEO

ビジネス

米国株式市場=反発、ナスダック最高値 経済指標が追

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、利益確定で 経済指標堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために…

  • 10

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中