最新記事

シリア

アサド化学兵器は見つけても廃棄不能?

国際管理下で廃棄計画が進んでいるが、処理を行う場所探しが最大の難関に

2013年12月16日(月)16時56分
ベサル・リクメタ、サマンサ・スタインバーン

前途多難 現地では国連とOPCWの活動が待ったなしで進んでいるが Khaled al-Hariri-Reuters

 9月に米ロが合意した枠組みに基づき、国際管理下におけるシリアの化学兵器の廃棄計画が進んでいる。

 化学兵器禁止機関(OPCW)がシリアに派遣している査察官によると、国内の化学兵器製造設備の破壊は完了。アサド政権は来年1月までに、保有する1300トン以上の化学兵器を国外へ移し、6月末までに廃棄を完了させる予定だ。

 ただし、具体的な処理方法は不透明なままだ。最大の問題は、処理をする場所をめぐって迷走が続いていること。NRKノルウェー公共放送局が入手した国連のメモによると、ベルギーとノルウェーのほか、5つの国連安保理常任理事国(アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリス)が候補に挙げられている。

 このうち、ノルウェーは既に受け入れ拒否を表明。処理設備がないことや法律の不備を理由にしている。

 そこで注目されたのが、07年に世界で初めて自国の化学兵器の廃棄を完了させたアルバニアだった。同国のディトミル・ブシャティ外相は10月に仏ル・モンド紙に対し、米高官から「打診」があったことを認めていた。

技術的な能力があるのか

 アルバニアの化学兵器は02年12月に、放棄されていた貯蔵庫で偶然、発見された。70年代半ばに中国から輸入されたと考えられているが、記録は見つかっていない。

 アルバニア政府はアメリカから資金と技術の支援を受け、18トン以上の化学兵器を処理。費用は約4500万ドルに上った。しかし、焼却後の有害廃棄物は25個の容器に入れられ、首都ティラナから20キロ近く離れた村で屋外のコンクリートの上に置かれている。EUの協力で有害廃棄物の貯蔵施設を建設する計画もあるがいまだに完成していない。

 環境保護団体は、アルバニアは化学兵器どころか通常兵器の処理も覚束ないと批判。有害廃棄物の管理がおろそかで、今も自然界に脅威を垂れ流していると指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国紙「日本は軍国主義復活目指す」、台湾有事巡る高

ワールド

ドイツ予算委が26年予算案承認、経済再生へ高水準の

ビジネス

サファイアテラ、伊藤忠商事による伊藤忠食品の完全子

ワールド

マクロスコープ:高市氏、賃上げ「丸投げしない」 前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中