最新記事

中東情勢

「殺人マシーン」の攻勢が続くシリア

反体制派の上級司令官が殺害され、兵糧攻めにも苦しめられ、苦戦を強いられる反政府勢力

2013年10月22日(火)16時41分
アレクサンダー・べサント

内戦は続く 自由シリア軍も劣勢ながら攻撃の手は緩めていない Saad Abobrahim-Reuters

 シリアの政府系メディアや活動家らによると、反体制派の上級司令官だったヤセル・アル・アブードがシリア南部で殺害された。

 シリア軍から寝返ったアブードは、シリア南部のタファスで攻撃を指揮している最中に死亡したと報じられている。彼は南部の反体制派の拠点ダルアーで反体制派の「最高軍事評議会」で作戦を統括していた。

 政府系メディアはアブードを「犯罪者、裏切り者......脱走兵」であると報じているが、ある活動家は、アブードは「最も実力のある現場の司令官の一人」だったと語っている。 

 また、シリア軍の戦闘機は、反体制派が部隊を進める首都ダマスカスの南東部を攻撃した。

 さらに、19日に政府側の検問所で自爆テロが発生したダマスカスの南東のムレハ地区でも、空爆が行われたと報じられている。反体制派はその後、検問所を支配し、焼き払われた薬品工場を占拠した。

国際社会への公開書簡も

 反体制派が支配するダマスカス郊外のモアダミエでは、食料不足が深刻化している。この地区では激しい戦闘により3000人以上の住民が家を追われているが、多くが今も取り残されている。

 シリア政府側の部隊は同地区を包囲し、反体制派らに対する兵糧攻めを行っているという。困窮する近隣住民は、反政府組織らによって配られた国際社会に助けを求める公開書簡に署名を行っている。

 書簡には、「命を救ってほしい。アサドの殺人マシーンの地獄から救ってほしい」と書かれている。「1年近くの間、モアダミエは包囲され、食料や電気、薬が手に入らず、外部との連絡もできずにガソリンもない」

 国連によれば、2年目に入っているシリア内戦はこれまで、10万人以上の犠牲者を出し、200万人以上の難民を生んでいる。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

中国過剰生産、解決策なければEU市場を保護=独財務

ビジネス

MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに大規

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中