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コートジボワールから始まる選挙革命

2011年4月13日(水)17時13分
アンドルー・メルドラム

 ワタラの当選が発表された大統領選挙で、当初バグボはワタラ派に大規模な不正があったと主張。自らが支配する憲法評議会に多数のワタラ票を無効とするよう働きかけて自身の勝利を宣言し、任期の延長まで打ち出した。

 以前ならそんなやり口も通用したかもしれない。だが今回は、コートジボワール国内でも、域内経済統合を進める西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)でも、バグボの不正は受け入れられなかった。アフリカ連合(AU)や国連、欧州連合(EU)やアメリカからも拒絶された。

 AUはしばらく態度を明らかにせず、12月始めには南アフリカのターボ・ムベキ前大統領を仲裁役として送り込んだ。

 ムベキが「アフリカ問題のアフリカ人による解決」という使い古された文句を持ち出したのは間違いない。バグボとワタラの両方が入って統一政府を作ることが解決策だ、と。この方法はジンバブエでもケニアでもうまくいかなかったのに、なぜコートジボワールでは通用するとムベキは思ったのか? いずれにしろムベキは早々に立ち去り、さっさと仲裁をあきらめた。

 不毛な交渉は数カ月続いたが、バグボの姿勢は変わらなかった。ワタラも一歩も引かず、アビジャン中心部にあるゴルフホテルに「影の内閣」を置いて国を統治しようとした。国連平和維持軍はバグボ派部隊の攻撃からホテルを堅守し、ホテルへの食料搬入を阻んでいたバグボ派による封鎖を破った。

 バグボはカカオ豆の輸出でカネを稼いでいたが、ワタラが出した輸出禁止令に国際社会が同調したことで、資金不足に陥った。そしてワタラ派部隊がバグボ派部隊を圧倒し、ほぼ全国的な支配権を手に入れた。残るバグボ支配圏は最大都市のアビジャンだけだった。

ナイジェリア選挙に希望が見える

 メディアが、バグボのことをコートジボワールの「実力者」と呼び始めた時、自分の時代は終わったと彼は悟るべきだった。その言葉は、バグボに実力があるという意味で使われたわけではない。もはや大統領とみなされていない、ということだった。

 バグボはワタラが陣取るゴルフホテルを武力攻撃するなどの、戦略的なミスを犯した。一方、国連は安全保障理事会決議に基づき、市民の命を守るためにバグボ派部隊の武器庫などを破壊。ワタラ派部隊が大統領公邸を襲撃し、バグボを拘束した。

 国連は潘事務総長の下、アフリカにおける民主主義を守るため、かつてより重要な役割を果たすようになっている。AUも、現任の政権がどんなものであれそれを支持するという長年の方針を転換し、より健全な組織になりつつあるようだ。

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