最新記事

中国

「タレ込み」の70%が報復される恐怖

2010年7月6日(火)15時07分
長岡義博(本誌記者)

 順調な経済成長を続ける中国だが汚職の広がりは深刻で、09年に収賄や横領で立件された公務員の数は4万人以上に上る。国民の不満を解消するため、検察当局は昨年6月、全国統一の「タレ込み」専用電話を開設。1年間の通報件数は29万件に上ったが、通報者の約70%が何らかの形で相手から報復を受けたという。

 地元紙の法制日報によると、報復は口頭での侮辱や暴行といった違法行為だけでなく、人事権を行使した降格や解雇など、一見合法的なやり方も横行。河北省では、ある村の幹部が土地強制収用の補償費をだまし取ったと通報した中学教師が、共産党員の党籍を剥奪され拘置所に監禁された。

 検察当局によれば、02年以降減り続けていた告発件数は、専用電話の設置によって09年には増加に転じた。しかし報復の恐怖は、国民の間に芽生えた勇気を萎えさせてしまう。「通報者を保護する法律の成立を急ぐ必要がある」と、深セン大学法学部の鄒平学(ツォウ・ピンシュエ)教授はあるシンポジウムで述べた。

 昨年、広州市の小学1年の女児がテレビの取材に「将来は汚職官僚になりたい。何でも手に入るから」と答え衝撃を与えた。対策を急がないと、中国は今以上に腐敗官僚が蔓延する国になりかねない。

[2010年7月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ワールド

中国がティックトック譲渡協定承認、数カ月内に進展=

ワールド

米、中国企業への輸出規制を1年停止 首脳会談受け=

ビジネス

独10月CPI、前年比2.3%上昇 伸びは前月から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 6
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中