最新記事

国家債務

日本は次のギリシャになるか

日本が財政危機に陥るのは時間の問題という声が強まり始めた

2010年6月25日(金)13時47分
ギャビン・ブレア

 ギリシャの財政危機を機に「政府の借金」が世界の関心事になったが、そのなかでも特に日本に注目が集まっている。少なくとも数字の上では、日本の財政はギリシャが健全に見えるほどの危ない状況にあるからだ。

 日本の公的債務残高は対GDP(国内総生産)比で約200%。ギリシャは115%。5月19日にスイスの国際経営開発研究所が発表した予測によれば、日本が公的債務を健全とされる対GDP比の60%に下げるには、2084年までかかる。ギリシャは31年までだ。

 IMF(国際通貨基金)は11年度から財政再建への措置を取るようあらためて日本に提言した。これは日本には財政再建に向けて意味ある対策を取る意欲も能力もあるという前提だが、今のところその前提は正しくないようにみえる。

 5月10日、財務省は「国の借金」残高が10年3月末時点で過去最大の883兆円に達したと発表した。国民1人当たり約693万円(7万5000ドル)の借金を抱えていることになる。ギリシャは半分以下の3万2500ドルだ(ただし1人当たりGDPは日本の7割しかない)。

起こり得る唯一の結果はインフレ

 09年度は日本の国家予算の約4分の1が既存の債務返済と利払いに充てられた。10年度予算では、新たな借金となる国債発行額が戦後初めて税収を上回った。

 ギリシャとは状況が異なるが、問題は日本が財政危機に陥るかどうかではなく「いつ」陥るかだという見方が、エコノミストや投資家、批評家の間で増えている。

 早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は日本のバブル経済の専門家として知られ、バブル崩壊を予期していた少数派のエコノミストだ。今の日本経済に関してやはり暗い見通しを示す野口は、国家債務の状況からすると最終的にハイパーインフレ(超物価高騰)に陥る恐れがあると言う。「起こり得る唯一の結果はインフレで、唯一の問題はそれがいつ起きるかだ」

 日本では長い間デフレが続いているため、ハイパーインフレに陥る危険は国民にも政治家にもピンと来ないかもしれない。だが、「次の国家債務危機が例えばイギリスかアメリカかアジアのどこかで起きれば、それが引き金になり得る」と、富士通総研のマルティン・シュルツ主任研究員は言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中