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タイガーよ、イタリアに来い!

愛人騒動も人気につなげるベルルスコーニ伊首相が、堕ちた英雄タイガー・ウッズに手紙を書いたとしたら……

2009年12月16日(水)16時35分
クリストファー・ディッキー(パリ支局長)

名誉の負傷? ミラノで行われた政治集会で襲撃されたベルルスコーニ(12月13日) Reuters

 12月13日にミラノで開かれた政治集会で精神疾患があるとされる男にドゥオーモ(大聖堂)のミニチュアを投げつけられ、顔面を負傷したイタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相。念のために数日間入院することになったおかげで、思わぬ休憩ができそうだ。

 何しろ最近のベルルスコーニは窮地に追い込まれている。汚職容疑の裁判が数件。移民排斥的な言動やファシズム的なスタンドプレーは、社会に暴力の風潮を生み出していると左派に非難を浴びている(ただしベルスコーニによれば、彼を非難する判事や識者はみな共産主義者だ)。

 さらに派手な女性関係と妻との離婚騒動は、(好色の代名詞とされるイタリア貴族)ボルジア家並みに伝説の域に達しつつある。だが国民の間では今もベルルスコーニの人気は高く、本人も自分を売り込むチャンスをめったに逃さない。

 だからベルルスコーニが、不倫騒動で人気急落中のゴルファー、タイガー・ウッズに手紙を書いたとしても驚きではない。アメリカのセレブとイタリアの政治家という違いはあるかもしれないが、次のような内容になるのではないだろうか。

君の日焼けは最高だ

 親愛なるタイガー、

 まず最初に言わせてほしい。君の日焼けは最高だ。(同じようなことをバラク・オバマ米大統領に言ったら暴言だと批判する連中がいたが、彼ら共産主義者の言うことなんぞ知ったこっちゃない。私はものすごく努力して日焼けを維持している。生まれつきとはいえ、君の日焼けをほめて何が悪い?)

 君も知ってのとおり、私たちは最近同じ問題に直面している。妻は激怒して復讐に燃えており、愛人たちはカネに弱くメディアにペラペラと話をする(浮気相手に会話を録音されたことはあるかい?)。

 そのうえ顔に物を投げつけてくる連中がいる。君が何を投げつけられたかは忘れてしまったが。携帯電話だったかな? 私の場合はドゥオーモのレプリカだ。尖塔の部分の痛かったこと! 歯が2本と鼻の骨が折れて、唇と目の下が切れてしまったよ。

 私は時々しわ取りなどの美容整形をしているが、この傷は名誉の負傷として残しておくつもりだ。ただ、襲ってきたのが頭のいかれた男ではなく、愛人の1人を名乗る人物だったらよかったのに。それだけが残念だ。

 私が言いたいのはこういうことだ、タイガー。イタリアに移住して来い。この国は君を理解し、評価し、愛してくれる! それも君が女たらしなのに、ではなく、女たらしだからこそだ!

 アメリカでは50年代のテレビドラマに出てくるような「家族思いの温和な男」というイメージが、君の人気につながったのかもしれない。だがイタリアでは、タマの扱いがうまいというだけでは一人前の男とは見なされない。

 イタリアでは誰も私の汚職のことなんて話題にしていない(共産主義者は別だが)。誰もが話しているのは、私との関係をメディアに暴露する女性たちのことだ。「73歳なのに、すごいな!」ってね。

イタリアが天国な理由

 話を整理すると、君は5つの理由からイタリアに移住するべきだ。

 第1に、イタリア人であることは大変な栄誉だ。われわれは生まれつき日焼けしている連中をあまり歓迎していないし、実のところいつも連中を追い出す方法を考えている。だがもちろん、君は例外だ。

 第2に、イタリアには有名なゴルファーがあまりいない。というか1人もいない。だから君は本当に特別な存在になれる。

 第3に、イタリア人は君の運転を理解してくれる。少し前にイタリアでランボルギーニのパトカーが事故を起こして大破したニュースがあっただろう? あれを運転していたのは警官だ。消火栓にぶつかったくらい、どうってことない。

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