最新記事

米外交

それでも米露関係が改善しない理由

オバマ米大統領のモスクワ訪問で新しい関係に踏み出したように見える米露だが、両国の思惑の違いが関係改善を遠ざける

2009年7月7日(火)17時07分
クリスチャン・ブローズ

前任者とは違う? 7月6日にロシアで実現した首脳会談は米露の「リセットボタン」を押せたのか Denis Sinyakov-Reuters

 バラク・オバマ米大統領のモスクワ訪問に関するマット・イグレシアスの指摘に、米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院のダニエル・ドレズナー教授(国際政策)も賛同している


 米露の利害がある程度一致し、高官レベルの議論がそれなりに実を結ぶ可能性がある核兵器削減問題のような懸案事項に、訪露の目的を集中させた方がはるかに意味がある。


 確かに、米露間にある諸問題は、それぞれ「切り離して考えて」対処すべきだろう。つまり、利害が一致する問題では協力し、利害が衝突する問題については異議を唱えることを双方が了解しつつ、対立事項が全体の建設的な協力関係を阻害しないようにする。要するに、昨年4月にジョージ・W・ブッシュとウラジーミル・プーチン両前大統領が、ロシアのソチでの会談で達した結論を踏襲することだ。

 では今回のオバマの訪露は、アメリカの国益について何をもたらしたのだろうか。オバマは、米露の核保有量を削減させる合意に向けて多くの時間と労力を割いてきた。しかし、これをもってしても、両国の核兵器保持数が地球を何度も滅亡させられるレベルであり続けることに変わりはない。

 確かに、達成可能で現実的な目標ではある。しかし、これはそれほど差し迫った問題ではない。イランが核兵器開発を急ぎ、米露がその対応で一致できていない状況からすると、なおさらだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中