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女性のための「権力」の使い方──「シスターフッド」こそが、最大の武器である

POWER, FOR ALL

2022年07月08日(金)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

少し前、女性が「リーン・イン(一歩を生み出す)」し、それを周囲が応援することが重視された時期があった。しかし、実際には女性が「リーン・イン」するだけでは、組織内のパワーの構図を変えることも、出世することも簡単ではない。

今、日本でも女性の活躍が叫ばれ、女性役員の比率を上げることが促進されている。しかし、企業が一人だけ女性を役員に据えることは、周囲への刺激になったとしても、それによってパワー分布が変わる可能性はほとんどありえないと、バッティラーナ教授らは指摘する。

むしろ抜擢された人は立場上、「もっと成果を上げなければ」というプレッシャーが強まり、孤独を感じやすくなってしまう。それにもかかわらず「平等のシンボル」として、マイノリティ集団からごく少数の人材を企業幹部や取締役のポジションに登用するといった、この手の「平等主義」に企業は走りがちだ。

真の意味で変革を起こすには、パワーの再分配につながるような多方面からの介入が必要だとバッティラーナ教授らは指摘する。そのためにもジェンダーなどの属性によってリソースへのアクセス権に不平等が生じている原因をまずは探る努力が必要なのだ。

実際、「大きな仕事」は、いつもの「頼りになる奴」に声がかかってしまう。その結果、次々にチャンスがめぐってくる「正のサイクル」、あるいは次々にチャンスから排除される「負のサイクル」が続いてしまう。

このような「非公式のチャンス」に社内すべての人がアクセスできるように、たとえば掲示板などでメンバーを募れば、熱意と能力はあるのに、今まで声のかからなかった人材が手を挙げやすくなる。

女性が社会で本当の意味で活躍するためには、男性とはまた違う「権力(パワー)」の使い方がある。そのパワーの性質を知らないままに、さまざまな施策を打っても、単なる「掛け声」に終わってしまうことを理解することが必要なのだ。



ハーバード大学MBA発 世界を変える「権力」の授業
  ジュリー・バッティラーナ&ティチアナ・カシアロ (著)
  井口 景子 (訳)

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