最新記事

アメリカ

元トランプ選対本部長コンウェイの「信憑性の低い暴露本」超大作

The Nasty Woman

2022年06月15日(水)12時55分
ローラ・ミラー

220621p50macNW_CWY_02-20220615.jpg

5月に出版された回想録 COURTESY SIMON & SCHUSTER

だがこれは災難の始まりにすぎなかった。人種差別問題に触発された長女クローディアがTikTok(ティックトック)でリベラルな発言を繰り返し、21年には母親の虐待をにおわせる投稿をしたのだ。コンウェイは回想録で娘の反発には触れず、親の許可なく15歳の娘に接触した新聞記者に怒りの矛先を向ける。

本題を避けるためにさまつな点に怒りをぶつけるのは、いつもの手口だ。議論をうやむやにできないときはスルーする。「ボーリンググリーンの虐殺」なる架空の事件をでっち上げて移民に汚名を着せた件も本著では取り上げない。

もっとも、17年の「もう1つの事実」には触れている。スパイサーがトランプの大統領就任式は歴代最多の観衆を集めたという虚偽の発言をして物議を醸すと、コンウェイは「(発言は)もう1つの事実」だと擁護し炎上した。回想録では、あれは「もう1つの情報」と「追加の事実」がごっちゃになって口から出たものだと弁解している。

トランプがスパイサーに噓を強要したにもかかわらず、コンウェイはこの件を報道官が「勝手に犯した失態」──自分が尻拭いをさせられた男のヘマ──と片付ける。

コンウェイは随所で「男のエゴ」、とりわけ共和党系政治コンサルタントの暴走を非難する。いわく「コンサルタントたちは結託して甘い汁を吸い、政界の墓場には彼らに食い物にされて落選した政治家の死体が並んだ」。

政界で人脈を広げるために世論調査会社を設立した際に妨害したのはこうした男たちだとも、証言している。

フェミニストでないわりには、生まれつき優遇される男性への憤懣が頭から離れないらしい。コンウェイの筆致が最も冴えるのは「私をバカにして足蹴にした、仕事ができないくせに過大評価されている男たち」に牙をむくときだ。

結果的に献身を勝ち得たのだから、彼女の能力を認めたのはトランプらしからぬ英断だった。だが献身が純粋だったかどうかは分からない。

次の大統領候補を予想

いち早く暴露本を書いた元大統領補佐官のクリフ・シムズによれば、コンウェイはメッセージアプリで記者に情報をリークしていた。トランプを「世話の焼ける子供」と評したこともあったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    ウィリアム王子の「変な踊り」が話題に...女王代理の…

  • 2

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    思春期女子に広がる摂食障害...将来の妊娠・出産への…

  • 1

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

  • 2

    ミーガン・フォックスの「すっぴん」に「誰これ?」..…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    シャーロット王女の「プロフェッショナルぶり」に賞…

  • 5

    サッチャーから気鋭の記者まで演じ、「Gスポット」を…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    メーガン妃は「努力を感じさせない魅力がお見事」とS…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    キャサリン妃とメーガン妃の「本当の仲」はどうだっ…

  • 5

    メーガン妃から「ロイヤルいちごジャム」を受け取っ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が愛した日本アニメ30

特集:世界が愛した日本アニメ30

2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている