最新記事

女性問題

女性だけが受ける「生理による損失」...まずは経済的支援で不条理を正せ

THE HIDDEN TAX ON WOMEN

2021年05月20日(木)11時37分
アニタ・ダイヤマント(作家)

210525p53pe_03.jpg

購入費用が大きな負担となる生理用品 JEFF J MITCHELL/GETTY IMAGES

生理の貧困は重荷であり、疑念であり、自分ではどうにもできないという心細さであり、それによって絶望を感じたり、自分は悪い母親なのだと思わせる。

もっとも、「タンポン税」という言葉は誤解を招きやすい。タンポンやナプキンなどの生理用品に、特別な税金がかかるわけではない。売上税や消費税、時には嗜好品としての特別税など、生理関連費用にかかるさまざまな税金を総称したものだ。

しかし、税金の名目は何であれ、払うのは生理になる人だけだ。アメリカの消費税は大半の州で4〜7%だが、20年にアラバマ、アーカンソー、ルイジアナ、テネシー、ワシントンの各州は9%前後だった。10ドルのタンポン1箱に90セント。食費だけでぎりぎりの生活をしている人には、少なくない金額だ。

アメリカの企業には福利厚生として、給与の一部を医療費積立口座(HSA)や医療費支出口座(FSA)に積み立てる制度がある。口座は非課税で、医療費のほかに胃薬や日焼け止め、避妊具など市販品を購入できる。ただし、生理用品はつい最近まで対象外だった。

生理用品への課税は違憲で違法

つまり、生理用品の購入費用は所得税から控除されないばかりか、消費税まで負担させられたわけだ。連邦議会が生理用品を対象とする制度改正を行ったのは、コロナ禍が起きてからだった。補助的栄養支援プログラム(SNAP、旧フードスタンプ)といった連邦政府の低所得者向けの生活支援制度でも、生理用品の購入は対象外になっている。

生理の貧困の問題に詳しい弁護士のジェニファー・ワイスウルフに言わせれば、生理用品への課税は性差別であり、違憲で違法だ。

ワイスウルフは全米50州で生理用品を非課税にするよう求める裁判も起こしている。非課税化は州財政への大きな打撃になるとの意見もあるが、なぜ生理のある人だけが財政を支えなければならないのかとワイスウルフは反論する。ルイジアナ州ではお祭りに使うビーズ、テキサス州ではキャンディーバーが非課税品目になっているというのに。

だが状況は改善しつつある。15年には生理用品が非課税だった州は全米でたったの10州だったが(このうち5州は消費税が存在しない州)、20年には20州に増えた。課税対象から生理用品を外す動きは他の30州でも進んでいる。

女性の社会進出や世論、メディアからの注目を背景に、同様の動きは世界各地に広がっている。ケニアは04年に世界に先駆けて生理用品への課税を撤廃。オーストラリアやカナダ、インド、マレーシアやスコットランドといった国々がそれに続いた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

仮想通貨詐欺のネットワーク摘発、5.4億ドル資金洗

ビジネス

中国中古住宅価格、6月は下落幅拡大 新築も伸び鈍化

ワールド

訂正「農業犠牲にせず」と官房長官、トランプ氏コメ発

ワールド

香港の新世界発展、約110億ドルの借り換えを金融機
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    遺体を堆肥化する「エコロジカル埋葬」 土葬も火葬…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    メーガン妃からキャサリン妃への「同情発言」が話題…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    遺体を堆肥化する「エコロジカル埋葬」 土葬も火葬…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプvsイラン

特集:トランプvsイラン

2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる