最新記事

映画

男たちには分かるまい  この『若草物語』は最高!

Cinema’s Greatest Little Women

2020年06月25日(木)16時30分
デーナ・スティーブンズ

女性に制約のあった時代にそれぞれの道を歩む4人を若手女優が好演

<時代を超えた女たちの愛読書を、豪華キャストで21世紀の銀幕に復活させた秀作>

「プレゼントのないクリスマスなんて、クリスマスじゃない」。ルイザ・メイ・オルコット作の『若草物語』は、おてんば娘ジョーのそんな言葉で始まる。グレタ・ガーウィグによる最新の映画版『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』にも同じせりふがあって、これもまた観客への素敵なプレゼントだ。

原作に比べて甘ったるく、衣装がやけに目立ち、若い娘の恋愛やばか騒ぎの描写ばかりという批判もあるだろう。しかしそんなことを言うのは男だけ。『若草物語』を何世代にもわたって読み継いできた女たちは気にしない。

19世紀当時の女性が置かれた状況を、ガーウィグ監督は的確に映し出す。例えば作家志望の次女ジョー(シアーシャ・ローナン)が「家庭内の些細な喜びや苦労」は文学のテーマにならないと言い切ると、いつもジョーと張り合う末っ子エイミー(フローレンス・ピュー)がすかさず切り返す。「違うよ。ちゃんと書けば重要なことになるんだ」

不安から静かな自信へ

平凡な人々の日常をつづったオルコットの『若草物語』は、フェミニズムを生き延びて若い女性の愛読書になった。しかも何度も映画化され(サイレント作品2本を含む)、キャサリン・ヘプバーン、エリザベス・テイラー、ウィノナ・ライダーなどのスターが出演して注目された。

とはいえ、ガーウィグ版ほど俳優陣が役柄にはまった例は見当たらない。とりわけジョーに振られる男ローリーを演じたティモシー・シャラメ(『君の名前で僕を呼んで』)はパーフェクトだ。

シャラメには自然ないたずらっぽさが備わっている。ローナンとのケミストリーは性的なものというより、若い小動物のじゃれ合いのよう。金持ちお坊ちゃまの気だるさも素敵に醸し出す(ソファに横たわる姿の決まっていることといったら!)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 1

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 2

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が尊敬する日本の小説36

特集:世界が尊敬する日本の小説36

2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは