男たちには分かるまい この『若草物語』は最高!
Cinema’s Greatest Little Women
本作はガーウィグの2本目の単独監督作品。デビュー作の自伝的映画『レディ・バード』でヒロインを演じたローナンは、落ち着きがなくて頑固なジョーにぴったり。自分の顔を「やぼで不細工」と言うわりに美し過ぎるが、インクの染み付いた指を神経質に動かして、作家を目指す野心と不安を巧みに表現する。
しかし出版社を再訪する場面では自信にあふれ、ぺンネームや印税前払い金について一歩も引かない。決めぜりふもクローズアップもなしでヒロインの成長を静かに描き出した監督の手腕に脱帽する。
映画は姉妹がそれぞれの道を歩みだした時期から始まる。結婚願望の強かった長女メグ(エマ・ワトソン)は主婦に収まったが生活は苦しい。ジョーはニューヨークで家庭教師をしながら小説を書く。病弱な三女べス(エリザ・スカンレン)はマサチューセッツ州の実家にいて、エイミーは金持ちのおば(メリル・ストリープ)とヨーロッパ旅行中。そして舞台は4人が一緒に暮らす7年前へとさかのぼる。ガーウィグ監督は過去と現在を行き来させ、ばかばかしい出来事も後に懐かしい、あるいは心が痛む記憶になることを観客の心に刻む。
低予算の独立系作品から出発した脚本家でもあるガーウィグは今回の『わたしの若草物語』で大きく羽ばたいた。観客は自信とユーモア、スタイルに満ちた本作を見て、やっと出版にこぎ着けた自分の本を見るジョーのような満足感に浸るはず。ああ、次のプレゼントが待ち遠しい。
© 2020, The Slate Group
LITTLE WOMEN
『ストーリー・オブ・マイライフ/ わたしの若草物語』
監督╱グレタ・ガーウィグ
主演╱シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン
日本公開中

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