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子育て

過干渉は子どもの自立を妨げる

2020年05月12日(火)12時40分
船津徹

しつけは子どものあるがままへの干渉

子どもへの「過干渉」が起こりやすいのが「しつけ」を伝える2歳〜6歳の時期です。集団社会のルールや生活マナーを伝える「しつけ」は、子どものあるがままへの「干渉」であり、やり方を間違えると「過干渉」につながります。だからと言って、子どもの好き勝手に行動させていると、集団にうまく馴染むことができず、やはり自信を喪失させてしまう可能性があります。

子どものやる気を潰さずに「しつけ」を伝えるコツは、子どもとの信頼関係を強固にすることです。親への信頼感が高まれば、子どもは親の言葉に耳を傾けてくれます。たとえそれが自分の欲求や行動をコントロールしなければならないことでも必ず受け入れてくれます。

子どもとの信頼関係を強固にする一番の方法はスキンシップです。母親が抱っこしたり、膝の上に座らせたり、添い寝したり、手足をマッサージしたり、頭や肩や背中を撫でてあげたり「心地良い皮膚接触」を増やすと、子どもは素直になり、スッと母親の言葉を受け入れてくれます。

父親は、母親とはアプローチを少し変えて、身体を使った遊びを増やすと効果的です。肩車、お馬さんごっこ、相撲ごっこ、父親の足の上に乗って歩く竹馬ごっこなど、やや荒っぽい身体的遊びを増やすと、子どもは愛情を実感し、父親の言葉に耳を傾けるようになります。

また子どもに「しつけ」を伝える時は、親が手本を示してあげましょう。子どもに「元気に挨拶してね」と伝えるならば、まず親が子どもに元気に挨拶しましょう。そして「挨拶すると自分も相手も気持が明るくなるよ。だから挨拶は大切なのよ」と、子どもに分かりやすい言葉で説明してあげてください。

言葉の「過干渉」に注意する

子どもの身体が大きく、強くなってくると「手出し」は減りますが、一方で「口出し」が増えていきます。「だめでしょ」「こうしなさい」「あれやったか」「これやったか」と親に口うるさく言われると、やはり子どもは「自主的なやる気」を失っていくのです。

大人でも「あれやった?」「これやった?」「これに注意して」「ああしちゃダメ」とパートナーや上司から口うるさく言われ続ければ、フラストレーションが溜まります。子どもも同じです。この欲求不満が溜まっていくと、ある時に爆発して「キレる」行動へと発展するのです。

子どもを動かす時は、一方的に命令するのでなく、きちんと言葉で説明することを忘れないでください。「なぜそうしなければならないのか」という理由を説明すれば、子どもは必ず納得してくれます。

また「宿題やった?」「教科書持った?」「筆箱持った?」と子どもの行動に一つひとつ先回りして釘を刺していると「言葉の過干渉」となります。言葉の過干渉は、子どもの思考を停止させ、自分の意思で何も決めることができない子どもに育てる原因です。

忘れ物をして困る経験やテストで悪い点数を取って恥ずかしい思いをする経験が子どもには必要です。失敗経験ほど子どもを成長させてくれるものはありません。宿題を忘れて先生に叱られたり、失敗して恥ずかしい思いをすれば、次は失敗しないように、自分の意思で注意するようになるのです。子ども時代の失敗など後の人生でいくらでも取り戻すことができます。

親は(子どもが失敗しそうだなと思っても)口出ししたい気持をぐっとこらえて子どもに任せてみましょう。子どもを信じて、任せてみると、案外子どもが自分のことをきちんとできることに驚くはずです。

【参考記事】「ダメ、ダメ」言い過ぎる母親を生む日本社会で、自己肯定感の低い子にしない最高の方法

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