「100年後には肉食は廃れているかもしれない」それでも、肉はおいしい...
Did Meat Make Us Human?
肉食がもたらした弊害
肉をあまり食べない人は、食べたいけれど経済的余裕がないだけ、という通説は誤りかもしれないと、バーソンは主張する。恐らく、国が豊かになれば肉牛の需要が増えるという刷り込みが、新興市場向けの牛の増産につながるのであって、その逆は成り立たない。近現代になって植民地化された国で家畜の肉の消費量が増えたのは、手に入るのがそれらの肉だったからだ。
例えば、オーストラリアでは畜牛の登場で先住民の生活が悪化したという主張には説得力がある。ヨーロッパからの入植者が生産する牛肉を「食べられるようになった」先住民の生活の質は悪化した。
オーストラリア北部の先住民ヨルングの食生活に関する1948年のアメリカとオーストラリアの共同研究からは、植民地政府から配給される牛肉や小麦粉に頼らず、週に数時間の食料採集だけで必要な栄養を賄えたことが分かるという。一方、配給生活者は「ニワトリ、ヤギ、牛、トラック、火器」を手にしたが、暮らしは厳しかった。配給生活では、野営地を移るというわけにもいかない。むしろかつてのように土地を利用できるほうがいい。バーソンによれば、牛肉を食べる暮らしは「不安定」だ。
それでも結局、本書のメッセージは希望に満ちている。「人間は肉なしでは生きられないという主張は生物学と宿命の関係を逆に捉えている」とバーソンは指摘する。この主張はなかなか受け入れられないだろう、とも彼は語る。「肉食が私たちを人間にした」という通説とは違い、彼のは「明確な答えを求める人間の欲求に訴え掛けない」からだ。肉食は人間にとって最高の食事という考えも根強く、アメリカだけで年間3500万頭の牛が殺されている。
「2119年にはひょっとすると動物の肉を食べる習慣は廃れているかもしれない」とバーソンは言う。昔のように肉を食べたくても食べられなくなる日が、いずれ来ないとも限らない。
これは決して文明の挫折ではない。なるほど、ネアンデルタール人のハンターたちが大型獣を倒し、獲物を持ち帰って女たちの称賛を浴びる様子を想像すると胸が躍る。しかし、人類の祖先が来る日も来る日も地道にドングリを砕き、コケを集め、トカゲを追い掛けていた姿を想像するのも、ワクワクするではないか。

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