ユーチューバー出身の29歳が映す、SNS時代を生きるティーンの真実
Remember Eighth Grade?
ケイラの冴えない中学校生活は最後の1週間に突入してもぱっとしない ©2018 A24 DISTRIBUTION, LLC
<動画投稿で自分を変えようとする不器用な少女を 『エイス・グレード』は軽やかに優しく描く>
「今日のビデオのトピックは『自分らしさ』です」。13歳のケイラ(エルシー・フィッシャ ー)はYouTubeに定期的に投稿している動画で、そう語り始める。このニキビだらけのぶきっちょそうな少女ほど、人生の指南役に似合わない存在はいないのだけど......。
ケイラの冴えない中学校生活は、最後の1週間に突入しても相変わらず冴えない。学校では「一番おとなしい子」に選ばれ、憧れの男子に無視される。おまけに、父親(ジョッシュ・ハミルトン)は超ウザい。「食事のときはインスタグラムなんか見ないで、パパと話そうじゃないか」などと言ってくるのだから。
ボー・バーナム(29)の監督デビュー作である『エイス・グ レード 世界でいちばんクールな私へ』はユーモラスで、とてもユニーク。本物の中学生が中学生を演じるティーンドラマだ。
【参考記事】「正義感」と「偽物の人」に注意! SNSを居心地のよい場にする方法
大人の観客でも、誰もが誰もがかつては中学生だった。ケイラが人気者の女の子に認められようとして空回りする場面には、きっと胸が痛むだろう。「そのTシャツ、イケてるわね」とケイラは言うのだが、向こうの反応は「はあ?」なのだ。
この作品は、痛々しくもリアルな笑いと、スタイリッシュな映像が交互に切り替わる。好きな男の子のインスタを見たのをきっかけに、ケイラはSNSにのめり込む。するとエンヤの「オリノコ・フロウ」をBGM に、ケイラが見ているスナップチャットの自撮り写真やバズフィードのクイズ画面がモンタージュで映し出される。
夢見るような映像は、ケイラが仕方なくイヤホンを外すたびに中断される。見たいものだけを見られるSNSの世界と、平凡な日常のギャップが際立つ。『エイス・グレード』は「今どきの若者」をいたずらに嘆くことなく、SNS時代の目まぐるしい青春に飛び込む少女を軽やかに描いている。片時も手放さないiPhoneは心細さや自尊心の低さの表れかもしれないが、人と人とをつなぐツールでもあるのだ。
初監督作品で既に大物
ケイラは高校の見学会に行き、案内係の生徒オリビア(エミリー・ロビンソン)と仲良くなる。 舞い上がり、今の生活はもうす ぐ終わると気付いた彼女は、ウェブカメラに向かって「早く大人になりたい!」と宣言する。
だが、未来への期待はあえなくしぼむ。オリビアたちとショッピングモールに行った帰りに、彼女の男友達に性体験の有無を聞かれ、シャツを脱ぐよう迫られるのだ。