ユーチューバー出身の29歳が映す、SNS時代を生きるティーンの真実
Remember Eighth Grade?
バーナムはこれが映画デビューだが、スタンダップコメディアンとしては既に熱烈なファンを持っている。彼は16歳のときにユーチューバーとしてキャリアをスタート。2016年にネットフリックスで放映された『ボー・バーナムのみんなハッピー』では、自作の歌にダンスにキーボード演奏と多才ぶりを発揮した。だが、認められたいという欲求が強く出過ぎていた。
こうした押しの強い芸風は、『エイス・グレード』の対極にあるようにも思える。この心優しくて、好奇心あふれる秀作は、普通なら悪役にされそうなキャラクターも簡単には断罪しない。だが語られることの少ない体験に光を当て、見る者の思い込みを裏切るスタイルはバーナムのコメディーと共通している。
映画は90分少々で潔く終わる。ケイラが中学生としては最後の投稿動画を撮影する頃、観客はちょっぴり自信を持った彼女がこれからどう成長するのか、気になっているに違いない。
そしてもう1つ気になるのは、デビュー作にして一流監督の貫禄を感じさせるバーナムの次の作品がどんなものになるかだ。
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EIGHTH GRADE
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』
監督・脚本/ボー・バーナム
主演/エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン
日本公開は9月20日
※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。
[2019年9月24日号掲載]