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同性愛を公表したらキャリアに傷が──クラシック音楽界とメディアのタブー

Opening the Closet at the Met

2019年05月09日(木)14時15分
ジョエル・ローゼン(音楽評論家)

ネゼセガンの就任はクラシック音楽界の同性愛タブーに風穴を開けるか HIROYUKI ITO/GETTY IMAGES

<米メトロポリタン・オペラに同性愛の新監督が就任。これまで「フタ」をしてきた主流メディアの反省なき報道とは?>

2018年9月、ニューヨークのメトロポリタン・オペラに新しい音楽監督が誕生した。男性に対するセクハラ行為により前年3月に解雇された大物指揮者のジェームズ・レバインに代わり、43歳のカナダ人指揮者ヤニック・ネゼセガンが就任したのだ。同年12月の『椿姫』がデビュー公演になった。

メトロポリタン・オペラの音楽監督は、ニューヨークのクラシック音楽界で最も栄誉ある役職と言っても過言でないだろう。ところが、先頃ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に掲載された記事を読む限り、最も大きなニュースは、新しい音楽監督の音楽家としての資質ではなく、その性的指向らしい。ネゼセガンは同性愛者であることを公表しているのだ。

記事を執筆したザカリー・ウルフが指摘しているように、ごく最近まで、世界の一流オーケストラのトップに立つ同性愛の男性にとって、自らの性的指向を公表して堂々とタクトを振るうのは夢のまた夢だった。

進歩的なマンハッタンのコンサートホールですら、同性愛の指揮者たちはキャリアに傷が付かないように自らの性的指向を隠そうとしてきた。この点では、20世紀を代表するスター指揮者のレナード・バーンスタインも例外でなかった。

このような背景の下、NYTは、同性愛者だと公言してきた人物が由緒あるメトロポリタン・オペラの音楽監督に就任したことを大きなニュースと考えたのだろう。

ウルフの記事は、ネゼセガンの半生を詳しく紹介している。音楽学校時代にルームメイトだったビオラ奏者のピエール・トゥールビルと恋に落ち、貧乏暮らしから出発してリッチな暮らしができるようになるまでの歩みも記されている。ネゼセガンは、ロッテルダム・フィル、フィラデルフィア管弦楽団の首席指揮者や音楽監督を経て、メトロポリタン・オペラの音楽監督に上り詰めた。

妻との関係を過剰に美化

有名なゲイバーでウルフが行ったインタビューは、成功した同性愛カップルの豊かなライフスタイルをうまく描き出している。しかし、指揮者の性的指向に関するクラシック音楽界の進歩をたたえる気持ちに偽りはないのだろうが、この記事は結果的にNYTの不都合な真実に知らんふりを決め込んでいる。

主流音楽メディア(NYTを含む)は長年にわたり、クラシック音楽界に同性愛が存在しないことにする流れに積極的に加担し続けてきた。

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