『ハウス・オブ・カード』が単なる政治劇でなく、「何かを成し遂げる」魅力的な仕事人たちのドラマである理由

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<#MeToo運動の波が直撃し主演のケビン・スペイシーが降板するニュースが世を騒がせたが、最終シーズンはどうなった?>
2013年にネットフリックスでシーズン1が公開され、一躍人気作品となった『ハウス・オブ・カード』。映画監督のデヴィット・フィンチャーが制作の総指揮を執り、アカデミー賞俳優が主演を張る豪華布陣で、映画に劣らぬ完成度の高さが視聴者に驚きを与えた。
ストリーミング専用のドラマとしては異例のエミー賞ノミネートを果たし、主演(シーズン1~5)のケビン・スペイシーと妻役のロビン・ライトがゴールデングローブ賞を受賞。オバマ元大統領もファンだと公言していたことでも有名だ。この作品が11月2日、最終章となるシーズン6をネットフリックスで世界同時配信。これに合わせ、3回にわたってドラマの魅力を解説してきた。第3弾は、先日公開された最新作につながるストーリー全体をおさらいしながら、このドラマの有効活用法を紹介したい。
【第1弾】名人は危うきに遊ぶ──キレッキレの処世術は『ハウス・オブ・カード』に学べ
【第2弾】夫婦でも、無条件の献身はありえない──人気の海外ドラマが描くエリート夫婦の「共闘関係」とは?
夫は失職、妻が権力を得たら...
シーズン1~2でもたびたび対立することがあったふたりだが、お互いの目的に向けて協力し合う愛情のようなものを感じさせるシーンは多かった。ただ、シーズン3で夫が権力の頂点に上り詰めたあたりから、ふたりの関係が次第に変調を来す。クレアが夫を支える役回りにとどまることに耐えられず、自らが権力を掴むことへの野心を隠さないようになったことがきっかけだ。その第一歩が、クレアが国連大使に就くことだった。
それ以降のいきさつについては、ネタバレになるので本稿では触れない。一時、関係は離婚寸前まで追い込まれるものの、紆余曲折を経てなんとかふたりの協力関係は保たれることになる。ただし、シーズン4あたりから視聴者は、物語の重心が次第にクレアに移動しはじめたことを感じるはずだ。
ライバルや元部下、そしてメディアに次第に追い詰められていくフランシスに比べ、大衆からの人気が高まっていくクレア。身内の不幸もテコにして得た人気を武器に、シーズン5の最後には、ついに女性初の大統領に就任する。一方、辞職して一般人となり、物語の脇に追いやられた前大統領のフランシス。ドラマの一連の流れを見て、現実とダブったファンは多いのではないか。
スキャンダル発覚で降板された主役は過去にこう語った
最終章となるシーズン6では、クレアが大統領として、フランシスが外野からどうホワイトハウスに関わっていくのかが見所になるはずだった。ただ、シーズン6収録開始直後の17年、主演のケビン・スペイシーが過去に同性の俳優に対してセクハラを働いた疑惑が持ち上がる。